1994 Fiscal Year Annual Research Report
鉱物蒸発のカイネティクスと同位体分別およびその原始太陽系星雲への応用
Project/Area Number |
05833004
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 裕子 (永原 裕子) 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (80172550)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田近 英一 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (70251410)
圦本 尚義 東京工業大学, 理学部, 助教授 (80191485)
小澤 一仁 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (90160853)
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Keywords | 蒸発 / かんらん石 / 水素ガス / 真空 / 原始太陽系星雲 / 星間ダスト |
Research Abstract |
かんらん石を真空および低圧の水素ガスフロー中で、実験時間のみ変化させて蒸発程度を変化させた場合の蒸発速度を実験的に調べた結果、蒸発速度は水素ガス圧力に大きな依存性があることがわかった。10^<-6>気圧以下の低圧では蒸発速度は圧力依存性はみられず、真空中での蒸発速度に等しく、10^<-6>気圧から10^<-4>気圧の間では水素圧に対して1乗の依存性をもち、それ以上の高圧ではふたたび依存性は小さくなる。10^<-6>気圧以下での関係はj=0.33P_<H2>+8×10^<-7>として示される。ただしjは蒸発速度である。水素圧に対し1乗の依存性をもつことから、固体表面における1モルのかんらん石を1モルの水素分子がアタックする、という素反応が考えられる。 この結果を用いて一様なサイズのかんらん石粒子が太陽系元素存在度比の水素-炭素-酸素からなくガス中で急速に加熱、高温に保持された場合のライフタイムについて考察した。蒸発速度は初めは真空中における速度でおこるが、蒸発の進行とともに小さくなる。かんらん石粒子のサイズ変化、蒸発成分のフラックスを、無次元数hの関数として求めた。hはガスに対する固体成分の濃集の度合いとみなすことができる。hが3より小さい場合はかんらん石は完全に蒸発してしまい、その速度は真空中でのそれに等しい。hが3より大きい場合は系が平衡に到着し、蒸発は途中でストップする。平衡にいたる時間はhが大きくなるにつれ小さくなる。hが3近傍では完全蒸発、平衡到達ともきわめて長い時間を要する。太陽系星雲におけるhの値は0.1程度から数100であり、ダストの濃集の程度が大きい場合は星間ダストは星雲の加熱に対し生きのび、一方ダストがあまり濃集していない場合は星間ダストは完全に蒸発してしまい、系は均質化しうることが明らかとなった。
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[Publications] H.Nagahara: "Evaporation of olivine:Low pressure phase relations of the olivine system and its application for the origin of chondritic components in the solar nebula." Geopchim.Cosmochim.Acta. 58. 1951-1963 (1994)
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[Publications] 永原裕子: "珪酸塩メルト蒸発のカイネティクス" 月刊地球. 17. 53-57 (1994)