1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05834009
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中村 正彦 大阪大学, たんぱく質研究所, 助手 (20172439)
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Keywords | ミトコンドリア / ヘテロプラスミ- / mtDNA / 加齢変化 / 変異mtDNA / 分化誘導 / 萌芽細胞 / 老化ラット |
Research Abstract |
核外遺伝子であるミトコンドリアDNA(mtDNA)は各個体内に母性由来として常に均一に保持されていると思われていたが、個体のmtDNAにさまざまな多型が存在することが判明して、本研究を行い以下の三点について報告する。 1.個体におけるmtDNAの質的解析 mtDNAの多型の解析では、変異部位の塩基配列の解明とPCR増幅による定量から多型の種類と存在量を調べた。mtDNAで見つかったすべての変異はコードするたんぱくのアミノ酸に変異を与えるものではなかった。従って、変異による機能的な影響はない。また、臓器および加零によるヘテロプラスミ-の存在量の変化を調べたところ有意な差はなかった。すなわち後天的な変異蓄積によるものではないことが判った。これは個体差によるものであり、母体内の卵形成および受精時のミトコンドリアDNAの解析が今後の課題である。 2.培養細胞と個体におけるmtDNAの質量解析 mtDNAの複製機構とその調節に関してはほとんど知られていないことから、培養細胞を用いての細胞分化過程におけるmtDNAと老化促進マウスのmtDNAの存在量、複製能、加零変化を調べた。その結果、細胞内のmtDNAの複製能に顕著な影響はないこと。例えば、ミトコンドリアのたんぱく合成が阻害され、細胞分化が阻害される条件であってもミトコンドリアの増殖は全く阻害されないし、mtDNAからの転写されたmRNA量や細胞内ATP量も影響を受けないことが判った。むしろミトコンドリアの機能を減衰させる処理を施した場合には細胞内のmtDNAは増加し、ストレスに対処するものであることが新たに判明した。さらに老化促進マウスからの組織mtDNA含量は正常マウスより存在量が多い組織であることが判明した。 3.ミトコンドリア内のヌクレアーゼの解析 ミトコンドリア内に存在するヌクレアーゼの精製は含量が少なくさらに努力する必要があるが、単鎖DNAに対して特異的な活性を持つ分子種があり、精製中である。 今後の展開として、mtDNAの代謝変換速度の検討も必要であるが、細胞がどのようにしてmtDNAとミトコンドリアの機能維持に努めているかを新たに研究する方針である。
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[Publications] M.Nakamura,N.Hamai,A.Asano & K.Asano: "A relationship between cell differentiation and mitochondria?" Cell Stucture and Function. 19. 427- (1994)
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[Publications] K.Asano,M.Nakamura & A.Asano: "Is there any relationship between mitochondria and mammalian senescence?" Cell Stucture and Function. 19. 428- (1994)