1993 Fiscal Year Annual Research Report
糖尿病における血管の緊張や細胞増殖の調節機構の破綻に関する分子細胞生物学的研究
Project/Area Number |
05837015
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
小林 誠 九州大学, 医学部, 助教授 (80225515)
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Keywords | 糖尿病 / 細胞増殖 / 細胞生物学 / 分子生物学 / 血管 / カルシウムイオン |
Research Abstract |
高濃度ブドウ糖が初代培養血管平滑筋細胞の細胞周期とCa^<2+>動態に及ぼす影響を検討し、以下の結果を得た。1)無血清培養によって得られたG0期細胞に高濃度ブドウ糖を与えても、細胞周期の進行は認められなかった。2)血小板由来増殖因子(PDGF)刺激によって得られたG1期細胞に高濃度ブドウ糖を与えると、細胞周期はS期・M期へ進行した。3)G0期およびG1期細胞において、高濃度ブドウ糖は、Ca^<2+>動態に全く影響がなかった。4)ブドウ糖と同濃度のマンニトールは、細胞周期・Ca^<2+>動態共に影響がなかった。以上のことから、1)高濃度ブドウ糖は、血管平滑筋細胞において、コンピテンス増殖因子(G0期->G1期)ではないが、プログレッション増殖因子(G1期->S/M期)であること、2)高濃度ブドウ糖のプログレッション作用は、細胞質Ca^<2+>動態に非依存性であることが明かとなった。 平成5年度の研究によって、高濃度ブドウ糖自体が、血管平滑筋細胞の細胞周期を促進させるプログレッション増殖因子であることが解った。in situの体細胞は、普段は細胞周期回転から外れた増殖静止期(G0期)にあるが、高濃度ブドウ糖は、このG0期細胞には影響がない。しかし、PDGF刺激などでG1期へ進行した細胞においては,高濃度ブドウ糖は、細胞周期をS期/M期へ進行させることができる。これまで、高濃度ブドウ糖の細胞周期へ対する直接作用を検討した報告はなく、上記の平成5年度の研究成果は、糖尿病における網膜症や動脈硬化症の発症機序を解明する上で重要であると考える。また、高濃度ブドウ糖による細胞周期促進作用は、細胞質Ca^<2+>濃度の増加を必要としないことが解ったが、平成6年は、この細胞周期促進作用の細胞内情報伝達機序を解明したい。
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[Publications] Kuroiwa,M.: "Role of GTP-protein and endothelium in contraction induced by ethanol in pig coronary artery." J.Physiol.470. 521-537 (1993)
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[Publications] Kai,T.: "Effects of lidocaine on intracellular C^<2+> and tension in airway smooth muscle." Anesthesiology. 78. 954-965 (1993)
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[Publications] Ushio-Fukai,M.: "Effects of isoproterenol on cytosolic calcium concentration and on tension in the porcine coronary artery." J.Physiol.(London). 462. 679-696 (1993)
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[Publications] Aoki,H.: "G-protein involved in Ca^<2+>influx induced by endothelin-1 is sensitive to pertussis toxin in porcine endothelial cells in situ." Br.J.Pharmacol.(in press).
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[Publications] Aoki,H.: "Relationship between cytosolic calcium concentration and force in the papaverine-induced relaxation of medial strips of pig coronary artery." Br.J.Pharmacol.(in press).
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[Publications] Kobayashi,S.: "Cytosolic Ca^<2+> transients are not required for platelet-derived growth factor to induce cell cycle progression of vascular smooth muscle cells in primary culture:Action of tyrosine kinase." J.Biol.Chem.(in press).