1993 Fiscal Year Annual Research Report
公正さ判断と「快・不快」感情との相互作用に関する研究
Project/Area Number |
05851026
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Research Institution | TOHOKU WOMENS JINIOR COLLEGE |
Principal Investigator |
田中 堅一郎 東北女子短期大学, 生活科, 講師 (80212033)
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Keywords | 対人感情 / 公正判断 / 情緒的公正さバイアス |
Research Abstract |
好意的な他者と非好意的な他者との公正な判断におけるバイアスについて検討した。 実験Iにおける仮説 仮説IA:被験者は、好意的他者の行動を非好意的他者の行動よりも多く想起するであろう。 仮説IB:正しい行動は、好意的な他者における方が非好意的な他者においてよりも想起されるであろう。 仮説IC:正しくない行動は、非好意的な他者における方が好意的な他者においてよりも想起されるであろう。 方法 手続き:この実験で被験者は、好意的他者と非好意的他者に関する公正な行動と不公正な行動をそれぞれ5分間のうちにできるだけ多く自由再生して、それらを記述した。 要因計画:再生の対象者(“好きな人"・“嫌いな人")と、公正さ(“正しい"行動・“正しくない"行動)の2要因被験者内計画。 結果 再生の対象者と公正さの2要因による分散分析の結果、有意差の認められたのは、公正さの主効果、そして再生の対象者×公正さの交互作用効果であった。この結果から、仮説IB、仮説ICはともに支持された。“好きな人"(M=2.01)に関する行動における平均想起数は、“嫌いな人"(M=1.86)の行動についてのそれよりも多かったものの、その差は統計的に有意とならず、従って仮説IAは支持されるに至らなかった。 実験IIにおける仮説 仮説IIA:公正な行動は、非好意的他者よりも好意的他者に多く起こりやすいと認知されるであろう。 仮説IIB:不公正な行動は、好意的他者よりも非好意的他者に多く起こりやすいと認知されるであろう。 方法 手続き:被験者は実験の中で、公正なものと不公正なものあわせた60の行動が好意的他者、非好意的他者にどれだけ起こりやすいかを評定した。 要因計画:評定対象者(好意的他者・非好意的他者)と、公正さ(公正な行動・不公正な行動)の2要因被験者内計画。 結果 30個の公正な行動と30個の不公正な行動についての起こりやすさに関する評定値は、それぞれすべて被験者ごとに加算されて合計値が算出された。次にこれらの合計値について、評定対象者×公正さの2要因分散分析の結果、有意差の認められたのは、評定対象者の主効果、公正さの主効果、そして評定対象者×公正さの交互作用効果であった。これらの結果、仮説IIA、仮説IIBともに支持された。 本研究における実験結果は、公正さの判断を行う人の判断される人に対する感情によってバイアスを受けることを一貫して示した。こうした公正判断の際の対人感情によるバイアスは、いわば情緒的公正さバイアス(emotional fairness bias)といえるであろう。
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