1993 Fiscal Year Annual Research Report
ピロタイトを含む岩石に対する化学消磁法の有効性の検討
Project/Area Number |
05854031
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
石川 尚人 京都大学, 総合人間学部, 助手 (30202964)
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Keywords | ピロタイト / 化学消磁法 / マグネタイト / 等温残留磁化 / 非履歴残留磁化 |
Research Abstract |
ピロタイトを含む大隅半島花崗岩の試料を使い、化学消磁の有効性を検討した。はじめに等温残留磁化(IRM)と非履歴残留磁化(ARM)の獲得実験及び交流消磁実験と、X,Y,Z方向に磁場の強さを変えIRMをつけた試料片に熱消磁実験を行い、436、343の試料片はマグネタイトとピロタイトを含むこと、382、248はピロタイトのみを含むことを確認した。 化学消磁は、熱消磁と同じく3方向にIRMをつけた試料片に対して行った。また、もうひとつ試料片には、所定時間ごとにARMの獲得実験及び交流消磁実験を行った。溶解液には、粒子の溶解実験からピロタイトがより早く溶解することがわかった濃硝酸を用いた。化学消磁の際、試料と硝酸をいれた密閉容器は高透磁率金属材料により作成した円筒状の磁気シールドスペース内においた(磁場は100nT以下)。 ピロタイトを含む382ではIRM(ほとんどX成分)は349時間後には70%、248では30%減少し硝酸によりピロタイトが有効に溶解(-消磁-)されていることがわかった。 ピロタイトとマグネタイトを含む436ではIRM(X,Y成分)は、2-4時間後に約70%減少した後はほとんど変化しなかった。ARM実験から、2時間後では保磁力の弱い成分の消滅が認められた。これは大きな粒径のピロタイトが初期の段階で消滅したためかもしれない。また、熱消磁実験からピロタイトにより担われていることが確認されているZ成分は4時間後にほとんど残留磁化がなくなった。343では、IRM(X成分)は349時間後には30%減少したが、その減少の度合は消磁時間が進むほどピロタイトだけを含む試料よりも鈍くなった。これはピロタイトとマグネタイトの硝酸に対する抵抗力の違いを反映しているものとも考えられる。 以上、ピロタイトとマグネタイトとが存在する試料の自然残留磁化から両鉱物の磁化成分を分離するために、硝酸を用いた化学消磁法が有効である可能性が認められた。
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