1993 Fiscal Year Annual Research Report
骨の力学的再構築による適応と残留応力に関する初期研究
Project/Area Number |
05855015
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
安達 泰治 神戸大学, 工学部, 助手 (40243323)
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Keywords | 生体力学 / 骨 / 力学的再構築 / 残留応力 / 力学的適応 / 成長 / 生体工学 / 最適設計 |
Research Abstract |
生体組織は,工学分野で扱われる材料とは異なり,絶えず自らを成長・吸収させることにより,機能を維持・回復し,環境の変化に対して適応する能力を有している.本研究では,骨の再構築を力学的刺激に対する局所的な反応としてとらえ,これにともなう組織の力学的特性や自然状態変化がもたらす組織全体構造としての特性変化について実験的検討,数理モデルの提案及びそのシミュレーションを行った.以下に得られた結果の概要を示す. 1.生体軟組織と同様にその存在の予想される生体硬組織における残留応力の存在を,兎の脛骨・腓骨系及び牛尾椎の海綿骨・皮質骨系不静定構造に対して防水型のひずみゲージを適用することにより確認した. 2.残留応力を考慮した骨の力学的再構築モデルを提案し,有限要素法を用いた再構築シミュレーションを通じて,実験結果との比較を行い,応力調整としての骨の再構築による適応の仮説を支持する結果が得られた. 3.骨の力学的再構築に学ぶ構造最適設計手法への応用として,構造全体の最適性としての最大剛性及び局所再適性としての応力分布の均一化を実現するための,初期ひずみ及び密度分布決定問題の基本的な解を得た. 骨の再構築は本質的には各種細胞活動によるものであり,それらがどの様に骨に対する力学的刺激を感知し,生化学的なふるまいに結びつけるのかなど,最近細胞レベルでの挙動に関する仮説の検討が始められたところである.自己の力学的状態を感知し,自らを再構築することにより機能を維持し,それらが損なわれた場合は回復するメカニズムを解明することは,生物の有する巧さへの興味のみならず,臨床医学への応用,さらには,これまでの工学の分野で取り扱われてきた材料とは本質的に異なる点で,今後の工学分野への応用とそれらの発展が期待される.本研究は,生物に対する工学的なアプローチとしての初期的な研究として位置づけられる.
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Research Products
(16 results)
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[Publications] M.Tanaka: "Bone Remodeling Considering Residual Stress:Prelinminary Experimental Observation and Theoretical Model Development." Computational Biomedicine,(eds:D.K.,Held,et al.),Computational Mechanics Publications. 239-246 (1993)
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[Publications] M.Tanaka: "Preliminary Study on Mechanical Bone Remodeling Permitting Residual Stress." JSME International Journal,Series A. 37. 87-95 (1994)
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[Publications] 安達泰治: "弾性コッセラ体有限要素法とその微視構造を有する材料の変形シミュレーションへの応用" 日本機械学会論文集A編. 60. 191-197 (1994)
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[Publications] T.Adachi: "Cosserat Continuum Model of Bone Structure and Simulation." Proceedings of the Japan Congress on Materials Research.37(掲載予定). (1994)
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[Publications] 安達泰治: "皮質骨・海綿骨系の不静定構造と残留応力:牛尾椎による実験的検討" 日本臨床バイオメカニクス学会誌. 15(掲載予定). (1994)
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[Publications] M.Tanaka: "Residual stress in cortical-cancellous bone and equistress hypothesis at remodeling equilibrium" Proceedings of Thirteenth Southern Biomedical Engineering Conference. (掲載予定). (1994)
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[Publications] 安達泰治: "骨の微視構造モデルについての理論的検討(連続体モデルとの対応)" 日本機械学会第5回バイオエンジニアリング学術講演会講演論文集. 930-44. 22-24 (1993)
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[Publications] 田中正夫: "皮質・海綿骨系の残留応力解放実験:牛尾椎の場合" 日本機械学会第5回バイオエンジニアリング学術講演会講演論文集. 930-44. 25-27 (1993)
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[Publications] 安達泰治: "コッセラ体としての骨構造モデルとシミュレーション" 第37回日本学術会議材料研究連合講演会講演前刷集. 101-102 (1993)
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[Publications] 田中正夫: "骨の微視構造と再構築モデル" 日本機械学会第71期全国大会講演会講演論文集. 930-63A. 222-224 (1993)
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[Publications] 安達泰治: "弾性コッセラ体有限要素法による微視構造を有する材料の変形シミュレーション" 日本機械学会平成5年度材料力学部門講演会講演論文集. 930-73. 863-864 (1993)
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[Publications] 安達泰治: "局所の再構築と骨の階層構造" 第17回NCP研究会・機械の強度と形態研究懇話会シンポジウム論文集. 71-72 (1993)
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[Publications] M.Tanaka: "Proceedings of Second World Congress of Biomechanics" Regulation Model of Microstructural Stress in Trabecular Bone Remodeling(掲載予定), (1994)
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[Publications] M.Tanaka: "Proceedings of the Third World Congress on Computational Mechanics" Mechanical Remodeling of Bone with Microstructure:A Computational Model(掲載予定), (1994)
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[Publications] 安達泰治: "日本機械学会関西支部第69期定時総会講演論文集" 海綿骨の力学特性と骨梁再構築(掲載予定), (1994)
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[Publications] 坂上拡: "日本機械学会関西支部学生会学生員卒業研究発表講演会論文集" 内部成長をともなう構造体の力学的再適性(掲載予定), (1994)