1993 Fiscal Year Annual Research Report
ウェーブレット関数系を固有関数系としてもつ作用素の工学への応用
Project/Area Number |
05855049
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
坂口 文則 福井大学, 工学部, 助教授 (20205735)
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Keywords | ウェーブレット / 作用素代数 / 固有関数系 / 確率過程 / 擬似対角化 / ordering / 信号処理 / アフィン群 |
Research Abstract |
ウェーブレット関数系を固有関数系としてもつ作用素(申請時に説明済み)とその随伴作用素について、今回新たに、量子光学で用いられるボゾン生成消滅作用素の場合と類似の「作用素の ordering 問題」が定式化できることを示し、さらに、それを用いて、任意に与えられた確率過程の自己相関関係を非直交ウェーブレット擬似基底によって擬似対角化するシステマティックな計算法を提案した。これは、ボゾン演算子を用いた作用素の展開における2種類の「対角形式表現」である。(Glauber の)Q-表現とP-表現の相互変換の問題と数学的にアナロジーがあるものであるが、ボゾン演算子の場合とは交換関係が異なりより複雑であるため、若干の工夫を必要とする。今回提案した方法は、問題の作用素とその随伴作用素との間の交換子積が、「正規順序」で書いても「反正規順序」で書いても、それらの作用素の2次の項のみで展開できるという点に着目し、関係が同じ次数で閉じていることと関係の対称性を利用したものである。これにより、まず、パワ・スペクトルが周波数の逆数のべきで展開できるタイプの確率過程のついて相関の擬似対角化の計算法の具体的な表式を導出し、次にパワ・スペクトルが周波数の逆数と時刻の両方の関数になっている一般の場合について表式を導出した。後者の場合には作用素版のシャリエ多項式に関連が深いことがわかった。さらに、今回のアプローチは、これまで関係がつけにくいといわれてきたウェーブレットと微分積分演算との間に、数学的に根拠のある一つの関係が存在することを明らかにした。
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[Publications] 坂口文則: "相対エントロピーから見た共分散関数のウェーブレット基底による最良近似対角形" 電子情報通信学会論文詩A分冊. J76-A. 1066-1072 (1993)
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[Publications] 坂口文則: "ウェーブレットを用いて任意の3次相関関数をもつ確率過程を作る方法" 電子情報通信学会技術研究報告. 92-502. 49-54 (1993)
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[Publications] 坂口文則: "ランダム信号の「スケール間相互情報量」定式化の試み" 第16回情報理論とその応用シンポジウム予稿集. 557-560 (1993)
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[Publications] 坂口文則: "小倉による“ポアソン変数のコヒーレント状態表現"と“ガウス変数のコヒーレント状態表現"の対応関係について:その物理的意味" 電子情報通信学会技術報告. 93-531. 51-56 (1994)
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[Publications] 坂口文則: "非直交ウェーブレット関数系による確率過程の相関の擬似対角化問題における作用素代数の応用" 電子情報通信学会技術報告. 93-531. 69-74 (1994)
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[Publications] F.Sakaguchi: "On the Optimal Diagonal Approximation of the Covariance Function with Respect to the Relative Entropy :By the Wavelet Basis" Electronics and Communications in Japan. (採録決定済). (1994)