1993 Fiscal Year Annual Research Report
二重らせんヌクレオチド鎖に化学結合した分子間の電子移動ダイナミクス
Project/Area Number |
05855128
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
山下 宏一 理化学研究所, 反応物理化学研究室, 研究員 (90174672)
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Keywords | 電子移動反応 / DNA / 光反応 |
Research Abstract |
本研究では、“分子素子"の電子移動系構築に有用なマトリクスとしてDNAの二重らせん構造に着目し、DNAマトリクスの電子移動特性を物理化学的に明らかにすることを目的として、DNA二重らせんに結合できる電子移動分子としてRu(phen)_3^<2+>とMV^<2+>を用い、以下に述べる事項を検討し、成果を得た。 1.子牛胸腺DNAの共存下、Ru(phen)_3^<2+>およびMV^<2+>の基底状態の酸化還元電位を電気化学的に決定したところ、Ru(phen)_3^<2+>とMV^<2+>の酸化還元電位は、DNA添加の影響を受けないことが明らかとなった。 2.Ru(phen)_3^<2+>の紫外可視吸収スペクトルおよび発光スペクトルはDNA添加の影響を受け、Ru(phen)_3^<2+>がDNAと結合していることが確認された。 3.Ru(phen)_3^<2+>の発光寿命測定から、Ru(phen)_3^<2+>とDNAとの結合形態にはインターカレーションと表面結合の2つのモードがあることが判明した。インターカレートしたRu(phen)_3^<2+>の励起状態寿命は水溶液中の約2倍であり、DNAマトリクス内の環境が水溶液中と著しく違うことが明らかになった。 4.Ru(phen)_3^<2+>の発光のMV^<2+>による消光反応を発光寿命測定により検討した結果、インターカレーションと表面結合のいずれの結合形態においても、電子移動による消光反応が約100倍に加速されることが明らかになった。これは、主にDNAマトリクスへの反応種の濃縮効果によるものと考えられる。さらに、消光速度定数kappaqの電子移動距離依存性が非常に小さいことが判明し、DNA二重らせんの塩基対が電子移動過程を促進している可能性が示唆された。
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