1993 Fiscal Year Annual Research Report
腸球菌誘導性生体反応修飾物質による白血球数増加促進効果と癌治療に関する研究
Project/Area Number |
05856060
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
長谷川 貴史 宮崎大学, 農学部, 助手 (10237969)
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Keywords | 腸球菌 / TNF / 白血球減少症 / 化学療法 / 白血球再構築促進 / 死亡率低下 / 好中球機能活性化 |
Research Abstract |
Enterococcus faecalis(腸球菌)の加熱死菌体(FK-23)には腸瘍壊死因子(TNF)産生誘導能のあることが知られている.TNFはコロニー刺激因子,特にGM-CSFの産生を増強させることから,化学療法時の白血球減少症に対して有益な作用をもたらすことが期待される.本研究では犬にサイクロフォスファマイド(CY)を投与して実験的に白血球減少症を作出し,これらにFK-23を経口投与してその作用を検討した. まずFK-23の至適濃度について検討した.10,100,200mg/kgのFK-23をそれぞれ3頭の犬に経口投与したところ,いずれの濃度においてもCY誘導性白血球減少症を抑制することはできなかったが,FK-23は濃度依存的に白血球の再構築を促進した(ただし統計的な有意差は得られなかった).15頭の犬に100mg/kgのFK-23を投与したところ,FK-23投与群では白血球数増加の程度が促進されるとともにCY投与後白血球の上昇に転じる日数がFK-23無投与群に比較して有意に短縮された(FK-23無投与群:8.95+0.20,FK-23投与群:8.00+0.16).末梢血白血球の分画検査ではFK-23投与群において好中球の割合が増加していた.骨髄検査では好中球系細胞の増加によりFK-23投与群のM/E比が上昇していることが示された.FK-23投与犬ではCY処置に伴う一般状態の低下が抑制される傾向にあった.さらにFK-23はCY処置に起因する死亡率を低下させた(FK-23無投与群:16.1%,FK-23投与群:4.3%).ラッテクスビーズ法を用いて測定したFK-23無投与群の末梢血好中球の貪食能はCY処置によって正常レベルの半分以下まで低下し,CY処置後14日経っても正常レベルの約半分程度までしか回復しなかった.しかし,FK-23投与群ではCY処置に伴う貪食能の低下が抑制されるとともに,それがすみやかに正常レベルに回復した.好中球の化学発光能につても検討したが,貪食能と同様の結果が得られた. 以上のことから,FK-23の経口投与は抗癌剤投与時にみられる白血球減少症の改善促進効果のみならず宿主の免疫応答増強効果をもたらすことが示唆された.今後の研究では骨髄活性化のメカニズムを解析するとともに,現在検討中である臨床知見をさらに蓄積してFK-23の臨床応用法を確立する予定である.
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