1993 Fiscal Year Annual Research Report
同種肺移植の再灌流障害時におけるエンドセリンの発現とその意義に関する検討
Project/Area Number |
05857134
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
諸星 隆夫 横浜市立大学, 医学部, 助手 (80244458)
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Keywords | 肺血流再灌流障害 / エンドセリン(ET) / ラット肺移植モデル |
Research Abstract |
ヒト同種肺移植において移植後早期に起こる一過性の肺水腫の原因は、リンパ路の遮断、気管支動静脈の途絶とともに、温阻血後の肺動静脈血流の再灌流時に発生する活性酸素が起こす肺胞上皮細胞の障害に原因を求める意見が多く、いくつかの活性酸素の阻害剤投与により再灌流後の肺血管抵抗、平均肺動脈圧の上昇を抑制し、動脈血ガス分析においても対照に比し良好なPa02値を得たとする報告があるが、不明な点も幾つかあるとされている。 すなわち活性酸素の発生は、虚血に陥った細胞内でのATP分解によりhypoxanthineが蓄積し、これはさらに、酸素が供給される再灌流時にxanthine oxidaseによりxanthineに酸化される際におこるとの説明がなされているが、好中球(顆粒球)による活性酸素の発生の可能性や、さらに活性酸素の阻害剤の作用部位は、細胞上皮細胞内のみならず、血管内皮の表面でこの好中球によって産生された活性酸素と反応し、血管内皮細胞の障害を軽減させている可能性も考えられている。一方、最近血管内皮細胞由来の血管収縮因子としてEndothelin(以下ET)がヒト、ラット他において種々の血管内、平滑筋内に見出されており、実験肝移植の再灌流後の微小循環障害におけるETの関与と同抗体の投与による障害の軽減は既に報告されており、また肺循環においても、ラットの肺動脈内皮に形態上の障害を来す薬剤投与による肺高血圧実験モデルにおいても、血中ET濃度が上昇するとの報告があり、また冠動脈虚血後の再灌流時にETの分泌の増加の報告もある。 平成5年度の研究計画では、当初コントロール群、除神経・リンパ遮断群・移植群で肺血流遮断・再灌流を行いその前後の末梢血中、肺組織内でのET濃度の比較、移植群では抗ET抗体投与の有無により再灌流障害の予防効果の有無を見ることを計画したが、ラットでは移植手技が容易ではないため前2群間の血中ET濃度の比較のみとなった。いずれの群においても再灌流後1時間の時点ではコントロール値と比し有意な上昇は認められなかった。今後再灌流後の採血時間を変え、また他の因子(NO:血管弛緩因子)の同時測定も行い、また手技の向上を図り、残る移植群の実験等、更に研究を続けたい。
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