1993 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト血清の^2Hおよび^<17>O‐NMR測定(手術侵襲下における水の状態変化)
Project/Area Number |
05857162
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
多田羅 恒雄 慶応義塾大学, 医学部, 助手 (30207039)
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Keywords | プロトン核磁気共鳴スペクトル / 血清 / 周術期 / 代謝 |
Research Abstract |
周術期の患者血清のプロトン核磁気共鳴スペクトルの測定を継時的に行った。この結果、リポ蛋白、糖蛋白の幅広いシグナルに加えて、乳酸、バリン・アラニン・ブドウ糖のシグナルが同定された。 加刀前には、アラニン、乳酸の増加が見られたが、これは術前の飢餓状態、精神的要因により、アラニンがエネルギー源として動員されていることが考えられた。手術の進行に伴い、乳酸、ブドウ糖の著明な増加が見られ、アラニンも増加傾向にあった。これは、手術侵襲による嫌気性解糖、糖新生の亢進を意味する。リポ蛋白は減少傾向にあったが、これは術中、脂肪がエネルギー源として利用されていることが考えられた。アラニンは術中増加傾向にあったが、これは糖新生の基質としてアラニンが動員されていることを示す。糖蛋白は、手術中増加する例が見られたが、これは手術中侵襲による生体反応と考えられた。術後は、乳酸、ブドウ糖は、術前にまで減少した、リポ蛋白は、術前まで増加した。糖蛋白は、術後も術前に比べ増加していたが、これは糖蛋白が組織修復の基質として利用されるためであると考えられた。 本法は、他の分析法に比べ、一つのスペクトルにより、多くの物質の分析を行えること、特別な前処理が不要であること、測定が短時間であるなどの利点を有する。正確な定量は困難であるが、周術期の経時的な代謝変動のスクリーニング、モニターとして有用であることが示唆され、今後の臨床応用が期待される。
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