1993 Fiscal Year Annual Research Report
熱ショック蛋白質HSP90のSV40ラージT抗原との複合体形成の解析
Project/Area Number |
05858105
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Organization for Medical Research |
Principal Investigator |
宮田 愛彦 財団法人 東京都臨床医学総合研究所, 細胞生物学研究部門, 研究員 (70209914)
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Keywords | ストレス蛋白質 / 熱ショック蛋白質 / 分子シャペロン / SV40 / ラージT抗原 / オリゴマー酵素 / p53 |
Research Abstract |
SV40のLargeT抗原(LT)は、ダブルヘキサマーの多機能酵素である。またLTはHSP70と複合体を形成することから、その高次構造形成にはシャペロン蛋白質の関与が考えられる。そこで、HSP90が細胞内でLTと複合体を形成してLTの局在・高次構造形成・活性等を制御する可能性を考え、以下の実験結果を得た。 LTとHSP90とのSDS-PAGE上の分子量はほぼ同一であった。そこで、SV40でトランスフォームした細胞株とそれぞれの親細胞株の粗抽出液から、LTとHSP90を免疫沈降し、免疫複合体に含まれる蛋白質をWestern blottingによって解析した。その結果、COSなどのLT発現細胞でHSP90を免疫沈降するとLTが、またLTを免疫沈降するとHSP90が、共沈降されることがわかった。 この共沈降は、LTを発現していないCV1、HeLa細胞では観察されなかった。p53とHSP90とも共沈降は観察されず、また予めP53をimmuno-depleteした細胞粗抽出液でもHSP90とLTとの共免疫沈降が観察された。このことから、HSP90とLTの複合体形成にはp53は無関係であると結論された。 HSP90はHSP70やカゼインキナーゼII(CKII)とも複合体を形成している。一方 LTもp53もHSP70と複合体を形成し、またLTはCKIIの基質でありp53とCKIIは共免疫沈降することが知られている。おそらく細胞内でこれらの多数の蛋白質が様々な組み合わせで複合体を形成していると考えられる。 HSP90のシャペロン様機能を調べるため、HSP90とLTとを精製し、in vitroの再構成の実験を試みた。LTは、温度・ATP依存的にmonomerから6-merを形成した。比較的低温ではHSP90の存在下でATP依存性のLTの6-mer形成が促進された。これらの結果は、細胞内でLTは合成後一過的にHSP90と相互作用して活性型の6-mer形成をしている可能性を示唆している。LTのDNA結合能に対してはHSP90を単にin vitroで加えただけでは影響が見られなかった。
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[Publications] Li,S.I.,Miyata,Y.et.al.: "Insulin-induced circular membrane ruffling on Rat 1 cells expressing a high number of human insulin reseptors." Experimental Cell Research. 205. 353-360 (1993)
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[Publications] 宮田愛彦: "熱ショック/ストレス蛋白質(HSP)の機能" CBI News. 13. 1-4 (1993)
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[Publications] Yahara,I.,Minami,Y.et al.: "Structure and function of the 90-kDa stress protein,HSP90." The Journal of UOEH. 15. 50-54 (1993)
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[Publications] 宮田愛彦: "上皮成長因子(EGF),その受容体とシグナル伝達" 検査と技術. 22(in press). (1994)
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[Publications] 宮田愛彦・南康文: "ストレス蛋白質-基礎と臨床" 中外医学社(永田和宏編), 266 (1994)
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[Publications] 宮田愛彦(分担): "免疫学用語辞典(改訂増補第三版)" 最新医学社, 683 (1993)