2006 Fiscal Year Annual Research Report
中央アジア版刻史-ベルリン・トルファン漢文コレクションによる新研究
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05F05263
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高田 時雄 京都大学, 人文科学研究所, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
WANG Ding 京都大学, 人文科学研究所, 外国人特別研究員
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Keywords | 仏典 / 大蔵経 / トルファン |
Research Abstract |
主にベルリンに所蔵されるトルファン漢文コレクションを用いて中央アジアにおける版刻史を解明することが本研究の目的であるが、そのため二度にわたってベルリンで刻本の実物調査を行ったほか、東京、京都の関係する機関においても頻繁に調査を行った。その結果、本年度には以下のような研究の進展があった。まず(1)一次資料の整理である。ドイツに所蔵される印刷本仏典の全貌は基本的に掌握され、簡目の準備が整った。ドイツ側の画像提供を待って公刊予定の手筈である。著録は北宋、遼、南宋、金版の各大蔵経の順序にしたがい、単刻のものは別に排列する。(2)日本の卓越した図書資料資源を活用し、研究文献の收集を行った。また入宋、入遼した日本僧、新羅僧の記録中の、蔵経を下賜された記載に注目することで、仏典が外国に傳播する中国の行政的手順が明かとなった。(3)現在、研究の重点を置いているのは、宋遼代の印刷本仏典の西方流伝;イスラム化前夜の中央アジアにおける仏教活動の時代背景;(ドイツ、日本、中国の旅順に所蔵される大谷文書の三種の資料を中心とする)契丹蔵断片の綴合と比定である。契丹蔵の形態的な確定と部目の復元をおこなうことで、幻の大蔵経と呼ばれる契丹蔵に関するこれまでの資料を補填し、研究の空白を埋めることが出来る。(4)継続して新発見資料に注意し、特に1981年に中国で発見された印刷本仏典断片をいち早く利用したい。総じて言えば、本年度の研究の進展は大きく、初期の目標を達成できたものと考える。
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