2005 Fiscal Year Annual Research Report
産業連関分析手法を応用した分離可能性仮説を課さない定量的な家計消費行動分析の研究
Project/Area Number |
05J00456
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
板 明果 (佐々木 明果) 早稲田大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 住宅需要 / 分離可能性 / 消費関数 / エンゲル法則 / ミクロデータ |
Research Abstract |
住宅需要の推計に着目した多くの先行研究では、家計は「住宅サービス消費」と「住宅以外の消費」の2つの財から効用を得ると仮定して理論展開を行っている。これはすなわち、住宅とその他消費を暗黙的に分離可能であると仮定したモデル設計であると指摘できる(Deaton and Muellbauer (1980)、他)。分離可能性を課すということは、持家か借家かという住宅形態の違いがその他消費の決定に影響しないとの制約を課すことにつがなる。しかし現実には、家計は住宅形態も含めて複合的に消費を決定していると考えられることから、分離可能性を課す理論モデルの設計が適切であるかどうかは疑問が残る。そこで、今年度の研究課題として、住宅サービスとその他消費が分離可能であるかの検定を試みた。 まず、Working ? Leser型エンゲル関数を考える。13項目の消費財項目についてこの関数を当てはめ、SUR推定を行うこととする。分割した財項目が互いに分離可能であるとき、所得の変動は費用シェア(ある消費財項目が総支出に占める支出割合)に影響しない。ところが、エンゲル法則が知られていることからも明らかなように、所得の変動は費用シェアに影響することが実証的にも指摘されている。実際に推定を行ってみたところ、所得の変動は費用シェアに影響する結果を得ている。 さらに、Working ? Leser型エンゲル関数に住宅形態(持家/借家)を表す変数を含めて推定を試みた。住宅サービス消費がその他消費と分離可能である場合には、理論上では持家か借家かという住宅形態の違いがその他消費の決定に影響しないはずである。暫定的な結果ではあるが、住宅形態の違いは費用シェアに有意に影響する、すなわち、住宅形態とその他消費の分離可能性仮説が棄却される結果を得た。とりわけ、光熱費支出シェアへの影響が有意に検出されるのだが、これは主に、住宅形態の違いが家電製品の所有機器台数に影響していることに起因すると思われる。これまでの理論モデルと実態とに大きな乖離が生じていることが指摘される。
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