Research Abstract |
人々の生活スタイルは時代とともに変化する。日本では戦後,生活水準が大幅に向上することで生活スタイルや意識が変化した。生活スタイルの変化にともない,人々の求める財・サービスも変化するため,生活スタイルの変化が新たな財サービスへの需要を喚起する。戦後日本の高度成長期には,種々の耐久消費財が普及し,また日用品を中心とした使い捨て製品も普及したことで,家事や育児の負担が軽減され,人々の生活は急速に快適で便利なものになった。便利な財・サービスを消費することで快適な生活を享受することが可能なため,消費者は多様な技術・製品の提供を生産者に期待し,こうした需要の高まりを背景に生産活動が活発化するなど,これまで物資的豊かさの獲得の過程が戦後経済の原動力となってきた。 実際に,「三種の神器(電気洗濯機,電気冷蔵庫,白黒テレビまたは電気掃除機)」や「三C(カラーテレビ,ルームクーラー,自家用車)」の獲得は誰もが同様に強い関心を持ち急速に普及した財であり,これらの耐久財を保有することで消費者の生活スタイルは大きく変化した。具体的には,このような耐久財を保有することにより,家計は消費可能な財サービスの選択幅が広がることから、消費者行動が大きく変化する。例えば、冷蔵庫の保有は1日分以上の生鮮食品を購入・保存することを可能とさせる。冷凍庫付き冷蔵庫を保有した場合には、氷やアイスクリーム、冷凍食品なども購入可能となる。すなわち、耐久財はこれまでは購入できなかった財サービスを新たに消費の選択肢に加える。ところが,このような耐久財と消費者行動の関係性に注目した先行研究が存在するものの,これまで定説的な議論に止まっている。そこで,耐久財を保有することが消費者に商品・サービスの選択の幅を拡げる効果を持つことを考慮した新たな消費者行動モデルを提案した。具体的には,耐久消費財のなかでも特に冷蔵庫に注目し,冷蔵庫を保有する消費者の消費の選択肢が拡がる様子を記述する新しいモデルを提案した。
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