2005 Fiscal Year Annual Research Report
中世の真言文化圏にみる密教思想の影響と文学活動の解明
Project/Area Number |
05J00759
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Research Institution | Taisho University |
Principal Investigator |
高橋 秀城 大正大学, 人間学部, 特別研究員(PD) (20459259)
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Keywords | 頼瑜 / 『真俗雑記問答砂』 / 随心院 / 慧仁 / 仁空実導 / 二尊 / 講式 / 三鈷寺 |
Research Abstract |
頼瑜(1226〜1304)の著作に関する研究として、昨年度に引き続き内閣文庫所蔵『真俗雑記抄』の翻刻を行った(「佛教文化学会紀要」14号/2005.11)。『真俗雑記問答鈔』(以下、『真俗雑記』)には、頼瑜自身の和歌や漢詩、夢想の記事や和歌についての学問(歌学)に関することなど、文学に関わる記述が多く見られる。これまで十数本の写本を確認したが、内閣文庫蔵『真俗雑記抄』(乾坤)二冊は、『真俗雑記』の広本的な写本から項目を抜粋したと思われる内容になっており、他の伝本とは異なる性格を有している。今回の翻刻によってその全貌を明らかとなり、今後は記事の選定基準を探るなど編者の意識を探っていく予定である。 また、随心院の聖教調査を継続して行い、本年度は、慧(恵)仁、すなわち浄土宗西山派の学僧、仁空実導(1309〜1388)の印信に関する史料三点を翻刻紹介した(「随心院聖教と寺院ネットワーク」3輯/2006.3)。慧仁には多数の著作が残されているが、本史料は慧仁の密教的な側面が窺い知れる史料として興味深い。印信の内容や、随心院に蔵された経緯の検討から、宗派を超えた伝授の諸相や人的交流について論じた。 さらに、上野学園日本音楽資料室に所蔵される慧仁『二尊講略式』の翻刻紹介を行った(二松学舎大学21世紀COEプログラム「声明資料集」2006.3)。『二尊講略式』は阿弥陀仏と釈迦仏の恩徳による極楽往生を讃美する講式文である。式文からは、中国浄土教の大成者である善導の著作の影響が色濃く窺われることや、奥書の検討から江州宝寿寺と西山三鈷寺との繋がりが浮かび上がってくることなどを指摘した。 その他、『二尊講略式』の注釈作業や、室町時代末期の真言僧の教養が窺い知れる東京大学史料編纂所蔵の『連々令稽古双紙以下之事』を翻刻紹介した。
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