2006 Fiscal Year Annual Research Report
歴史意識としての「満洲」-満洲移民に関する戦後言説の社会学的分析-
Project/Area Number |
05J01097
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
猪股 祐介 京都大学, 大学院人間・環境学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 満州移民 / 引揚者 / 中国残留日本人 / 中国帰国者 / 拓友会 / 戦後社会論 |
Research Abstract |
本年度は岐阜県の旧満洲開拓団に対する聞き取り調査、長野県泰阜村の大八浪開拓団に関する村史編纂事業への参加というフィールドワークと満洲移民の引揚資料や体験記に関する文献調査によって、以下の三つの研究課題について新たな知見を得た。 1満洲移民の敗戦状況の原因分析 満洲移民の敗戦から引揚げまでの死亡率約30%が、一般在満日本人の死亡率7.5%に比べ遥かに高い原因を、満洲移民の入植に起因する問題と敗戦前後の日本政府の対応に起因する問題に分けて明らかにした。前者の問題では、土地収奪と現地労働力に依存した農業経営に加え、満拓等の植民地機関と戦前日本の満洲認識に基づく民族的優越感に支えられた、日本式の生活様式・価値観の貫徹が、敗戦後の開拓団の現地残留という選択肢を困難にさせたことを指摘した。後者の問題では、敗戦直前の関東軍・満洲国政府による最終防衛ライン設定と敗戦直後の日本政府による現地残留方針が与えた影響を分析した。 2満洲移民関連団体の活動状況・意識調査 岐阜県における拓友会活動状況調査と、現在活動中の団体におけるメンバーの活動に対する意識調査を実施した。その結果慰霊祭以外の活動を行なっている拓友会は2006年現在黒川分村遺族会となったこと、またその遺族会でも2005年の中日友好碑建立を一つの節目と捉えるメンバーが大勢を占め、今後その活動を慰霊祭のみに縮小していく傾向が強いことを明らかにした。 3中国帰国者に対する地域社会の対応 岐阜県より正式に業務委託をうけた拓友協会が、「残留日本人」の現地調査・帰国促進運動・帰国後の生活指導等において大きな役割を果たしたことを把握しつつ、1988年以降の帰国者の急増に際し、「中国残留孤児」への説得活動等を通じ、その帰国を抑制する方針をとったことを指摘した。
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