2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J03721
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
永田 英理 学習院大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 日本文学 / 近世文学 / 俳文学 / 俳諧 / 俳論 / 芭蕉 / 支考 / 付合文芸 |
Research Abstract |
本年は、博士論文を元にした『蕉風俳論の付合文芸史的研究』という著書を刊行した。同書は、蕉風俳論を中世歌論から近世後期の蕉門系伝書に至るまでの巨視的な流れのなかに位置づけ、史的考察を試みたものである。 第一部では、まず門人間における式目観の相違や、芭蕉の式目観との共通点について整理した。また、従来は三句単位で鑑賞するものであるとされてきた連句について、連歌論や俳論にも、一巻全体を対象とした作品鑑賞を行う姿勢がみられることを指摘し、かつて堀切実氏が提唱した、連句一巻を対象とする鑑賞方法について改めて検証し直した。本研究によって、その有効性について実証し得たと考える。 第二部では、芭蕉の門人である支考が、連句の付合手法を体系化した「七名八体」説という理論を取り上げ、それが享受されてゆく様相を検証した。その結果、安永・天明期以降の俳論書において、発句の案じ方の方法としても転用され始め、また、支考の説いた本来の用法から変質しながらも、近世俳壇において幅広く用いられていったことが判明した。 第三部では、芭蕉の発句表現の特質・その独自性について検証した。その結果、和歌に対する独自性として「本意」を「うち返して」(逆説的に)表現する手法が用いられていたこと、触覚の力を借りた「体性感覚」(全身の感覚を統合する感覚)を駆使した表現が効果的に用いられていることなどが明らかになった。 また、研究論文として「句解の誤読、俳論の誤読--作者、読者、継承者」を執筆した。俳譜は、その表現形式ゆえに読者に対して解釈を委ねる部分がきわめて大きい。そこで、『去来抄』「同門評」などを取り上げて、作者と読者が互いにそれぞれの解釈の齟齬をすりあわせてゆく作業について具体的に検証し、作品をめぐる「読み」の多様性などについて改めて論じた。
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Research Products
(2 results)