2005 Fiscal Year Annual Research Report
密度汎関数法による荷電高分子のシミュレーション(メゾスケールにむけて)
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05J04541
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
林 叔克 東北大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(PD) (00611641)
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Keywords | 荷電高分子 / イオンチャネル / 単細胞生物 / 環境応答 |
Research Abstract |
細胞は平衡から遠く離れた状態(非平衡系)で自己組織化された系である。細胞の集合としての生体は細胞、組織、器官等の階層性を伴っており、階層間の情報交換は個体の生命維持に不可欠である。したがってDNAレベルからのモデル構築、細胞膜レベル、個体レベルでの現象の観察から研究を行った。 ミクロなレベルからは、非平衡状態で自己組織化するDNAの階層構造を明らかにする計画である。そこで本年度はDNAを一本鎖の荷電高分子としてモデル化し、一本鎖の荷電高分子が多価カチオンと相互作用している系の理論構築を行った。特に自由度が大きい多価カチオンを粗視化するパラメーターを導入した。 細胞膜レベルでは、モデル生物としてゾウリムシを用い、膜に埋め込まれたイオンチャネルに注目している。電位勾配を溶液中につくることで、ゾウリムシの一個体としての行動を調べている。繊毛の運動性は、静止膜電位によってコントロールされており、膜電位はイオンチャネルの集団運動を反映している。したがって、イオンチャネルの働きから静止膜電位の変化を予測することができれば、ゾウリムシの一個体としての行動を理解できる。 一個体の行動として、環境因子(光、温度、変動磁場、水流)を組み合わせてゾウリムシに与え、速度、ターン数、一個体の軌跡を定量化できる実験系を構築した。環境因子を組み合わせた刺激に対する生物の応答の因果関係を議論し、理論構築を行っている。 今後、ミクロなレベルでのDNAの挙動を調べることと、モデル生物の研究の中から、本質的に非平衡・非線形である生命がどのように多様な環境の変化に対応しているのかを解明する計画である。
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