2006 Fiscal Year Annual Research Report
再結晶フェライト鋼における不均一組織の評価とその改善技術
Project/Area Number |
05J06196
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
名取 理嗣 九州大学, 大学院工学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 再結晶 / 大角粒界 / マルテンサイト |
Research Abstract |
これまでの研究により,極低炭素ラスマルテンサイト鋼の再結晶は,強加工したフェライト鋼の再結晶と異なる点が2点あることが明らかにされた.1つ目は再結晶が開始する時間が非常に長い点であること,2つ目は得られる再結晶粒の大きさが粗大であるという点である.そこで,本年度では,これらの特徴を明らかにするために極低炭素ラスマルテンサイト組織の再結晶メカニズムについて調査を行った. ラスマルテンサイト組織は,オーステナイト域からの焼入れ処理により得られ,非常に微細な組織であり,高密度の転位を含んだ組織である.本来なら,再結晶粒の生成に必要な駆動力を含んでおり,再結晶はすぐに生成してもいいが,先程述べたように再結晶粒の生成に長時間の焼戻しを要する.この理由は転位の分布状態が異なっているためであると考えられる.強加工したフェライト鋼では加工により転位の分布が不均一になり,転位セル組織等が形成されるが,ラスマルテンサイト鋼では転位の分布は均一であり,転位密度の不均一さに起因した方差角の大きな粒界は存在していない.そのため,ラスマルテンサイト組織ではもともと存在している大角粒界が張り出すことによって再結晶粒が生成する(粒界バルジ型再結晶).この粒界バルジ型再結晶は,粒界を挟んだ2つの結晶粒のうち粒界は転位密度のより大きい結晶粒に向かって張り出す機構である.つまり,焼入れラスマルテンサイト組織の転位分布は均一であるため焼戻し直後では粒界は移動することはできず,焼戻しに処理に伴いラスマルテンサイト組織の回復が不均一に進行することで粒界移動が起こることが明らかになった.さらに,張り出す粒界は粒界易動度を考慮すると25〜40度の方位差を有したランダム粒界に限られており,この割合はラスマルテンサイト組織中の大角粒界のうちわずか14%程度しか存在しておらずこのため得られる再結晶粒は粗大になることが明らかになった.
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