2005 Fiscal Year Annual Research Report
ヘテロスピン系を用いたモノメタリック単分子磁石の研究
Project/Area Number |
05J06224
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
金川 慎治 九州大学, 大学院・薬学研究院, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 単分子磁石 / アミノキシルラジカル / コバルト錯体 / ヘテロスピン系 |
Research Abstract |
本年度は、ヘテロスピン-モノメタリック単分子磁石について 1.高スピン化による単分子磁石の活性化エネルギー障壁の変化 2.配位子の置換基による結晶状態での磁気挙動の変化 の2点についての知見を得るため、新規有機スピン配位子の合成と、それらを用いたコバルト錯体の結晶構造解析、磁気測定をおこなった。 1.の高スピン化について、2つのアミノキシルラジカルを持つピリジン誘導体を合成した。低温EPRの測定で、この有機スピン配位子の基底状態がS=1であることを確認した。この高スピン配位子とCo(SCN)_2を溶液中、4:1で混合し、磁気測定を行なったところS=1/2の配位子を用いた場合よりも高温側にχ''のシグナルをショルダーとして観測した。これは高スピン配位子を用いることで大きなSを持ち、活性化エネルギー障壁が高くなっていることを示唆する結果である。 2.の置換基効果の検討には、phenyl、4-置換phenyl基(4-methoxy,4-t-butyl)および2,4,6-置換phenyl基(2,4,6-triphenyl,2,4,6-tri-t-butyl)をそれぞれ導入した、アミノキシルラジカルを持つピリジン誘導体を合成した。 これらを配位子として得られるCo(X)_2(X=NCS,NCO)錯体はX線結晶構造解析よりいずれも4:1の単核錯体であった。また、磁気測定では、これらの錯体は反強磁性体(phenyl,4-methoxy)、スピンキャンティング(4-t-butyl)、および単分子磁石(2,4,6-tri-t-butyl)とそれぞれ異なる磁気挙動を示した。これらの構造解析と磁気測定より、「分子間の磁気的相互作用を合成的な手法により制御することで、類似の構造を持つ化合物において単分子磁石からバルクの磁性にわたる幅広い磁気挙動の観測に成功した」と結論付けた。
|