2005 Fiscal Year Annual Research Report
古代エジプトデルタ地帯における動物相の変遷とその利用
Project/Area Number |
05J07444
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
北川 千織 名古屋大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 考古学 / 動物考古学 / エジプト考古学 |
Research Abstract |
エジプトの東デルタに所在するカンティール/ピラメセQantir/Piramesse遺跡(新王国時代、紀元前16-10世紀)はラムセス2世治下の首都であり、王官と付属の所謂ワークショップ(工房)跡から、金属器・土器・石器などと共に動物遺体約7000点と骨角器(および関連する加工痕を有する動物骨)約400点が出土している。研究代表者は、ここを核遺跡として古代エジプトの動物遺体と骨角器の研究に携わっている。カンティール遺跡は1980年代から20年以上にわたり調査されてきたが、骨角器に関しての報告は未だ出版されておらず、動物遺体は一部報告されている資料と未出版の資料が存在する。2004年までの調査で出土した動物骨の同定・記録と骨角器の実測は完了し、現在データ分析を進めている。これまでの分析から、カンティール遺跡で利用された動物はその大部分が家畜であるが、数は限られるものの多様な野生動物も狩猟や交易などにより遺跡に持ち込まれていたことが明らかになった。テル・エル・ダバTell el-Dab'a遺跡(東デルタ)、ブトButo遺跡(西デルタ)、アビドスAbydos遺跡(中エジプト)、アコリスAkoris遺跡(中エジプト)、エレファンティネElephantine遺跡(上エジプト)、アスワンAswan遺跡(上エジプト)出土の動物遺体も併せて比較検討し、下エジプト(デルタ地帯)の動物相の変遷・利用と、動物利用にみられる地理的差異(上・中・下エジプト)も考察を進めている。また骨角器の加工技術についても加工道具や遺構などと併せて分析中である。 平行して、今後の出土資料同定の為に比較現生標本も収集している。これまで主にナイル産と一部紅海・地中海産魚類の標本作製を行った。
|