2005 Fiscal Year Annual Research Report
圧力効果を利用した蛋白質の折り畳み機構における水分子ダイナミクスの直接観察
Project/Area Number |
05J09383
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
木村 哲就 大阪大学, たんぱく質研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 蛋白質 / 折り畳み / フォールディング / 圧力 / 電子移動 / 遷移状態 |
Research Abstract |
蛋白質が折り畳む過程において、水分子に蛋白質鎖からの排出(脱水和)というダイナミクスが遷移状態の形成及び遷移状態からの天然状態へ構造変化をする際に重要な働きをすることが計算機実験や速度論的実験から推測されている。しかし、水分子を分光学的に捉えることは非常に困難であり、脱水和の実験的証拠というのは限られてきた。 そこで、蛋白質の水和状態が部分モル体積に反映されることに着目し、反応速度の圧力依存性から得られる活性化体積を元に、折り畳み遷移状態が形成される際の脱水和をより直接的に検討できないか試みた。種々の圧力下での折り畳み反応追跡するために、光応答性還元剤であるNADHから酸化型チトクロムcへの電子移動反応を折り畳み反応のトリガーとして利用し、還元型チトクロムcの折り畳み反応を3.2〜4.0Mグアニジン塩酸塩存在下、1〜2000barの圧力下で追跡しました。その結果、グアニジン塩酸塩非存在下、常圧下における活性化体積は-14±8cm^2・mol^<-1>と求められた。この負の体積変化は疎水性基からの脱水和を直接的に示す実験結果である。 この脱水和が遷移状態の形成においてどのような役割を果たしているのかを考察するために、遷移状態の熱力学的な特徴をあらわす活性化パラメータを検討すると、同じ折り畳み過程について、正の活性化エントロピーが報告されている。露出表面積の減少によって蛋白質鎖のエントロピーは減少しているにもかかわらず、正の活性化エントロピーが観察されるということは、蛋白質鎖に水和していた水分子が溶媒へ排出されたために溶媒のエントロピーが大きくなった結果だと推測された。つまり、折り畳み過程における脱水和というダイナミクスによって、構造形成に伴う蛋白質鎖のエントロピー減少が補填され、その結果、遷移エネルギー障壁が低くなり、効率的な折り畳みが実現されていると考えられた。
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