2005 Fiscal Year Annual Research Report
インフレーションに伴い生成される大域的磁場による宇宙のバリオン数生成に関する研究
Project/Area Number |
05J09487
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
馬場 一晴 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 宇宙論 |
Research Abstract |
本研究課題の目的は、インフレーションに伴って生成される大域的磁場による、宇宙のバリオン数生成のシナリオを確立する事である。この大域的磁場は、超弦理論等の高次元時空理論から予言されるディラトンが電磁場と結合し、電磁場の持つ共形不変性が破れる事に起因して生成される可能性がある。ディラトンは、重力場とも結合する可能性があり、この結合に起因する宇宙論的帰結を理解する事は、大域的磁場の生成機構及びこの磁場の磁気ヘリシティに起因した字宙のバリオン数生成の研究にとって極めて重要である。そこで本年度は、スカラー曲率と結合した2つのディラトンが存在する理論の枠組みにおいて、曲率揺らぎの新たな生成機構であるカーバトンシナリオの実現可能性を研究し、その内容を学術論文として公表した。 カーバトンシナリオでは、通常のインフレーションシナリオとは異なり、宇宙の大規模構造の種となる曲率揺らぎが、インフレーションを引き起こすインフラトンとは異なる、より遅くに崩壊するカーバトンと呼ばれるスカラー場の量子揺らぎから主として生成される。 結果として、2つのディラトンとスカラー曲率との結合定数が1より充分小さくかつ互いに近い値の場合、換言すると、2つのディラトンが近似的な0(2)対称性を持つ場合には、本理論の枠組みにおいて、2つのディラトン以外にその他の場を導入せずとも、カーバトンに相当する場が存在する可能性がある事を明らかにした。更に、このカーバトンに相当する場が2次型のポテンシャルを持つ場合のカーバトンシナリオを考察した結果、宇宙背景輻射の非等方性に関するWMAPの観測からの制限と整合的なパワースペクトルの振幅及びその指数を持つ曲率揺らぎが生成可能である事を示した。
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Research Products
(1 results)