2007 Fiscal Year Annual Research Report
明治時代を中心とした、書籍の製産・流通・享受に関する研究
Project/Area Number |
05J10060
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Research Institution | National Institute of Japanese Literature |
Principal Investigator |
磯部 敦 National Institute of Japanese Literature, 複合領域研究系, 特別研究員(PD)
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Keywords | 書籍文化史 / 近代出版史 / 読書会 / 弘前郷土史 / 京都郷土史 / 日清戦争 / 子ども / メディア |
Research Abstract |
1.前掲「研究発表」(1):自他楽会とは、明治20年代、弘前の和徳小学校の教員たちを中心に結成された読書グループである。書籍の購入や貸し付けを記録した内部史料は、現在、弘前市立弘前図書館に収蔵されている。基幹研究「十九世紀の出版と流通」研究班が同史料の調査・翻刻をおこない、その成果をここに公表。磯部は、明治29年『記録簿』『会計簿』『書籍貸付簿』の翻刻を担当した。 2.前掲「研究発表」(2):文栄堂とは、昭和19年まで活動が確認できる、京都の仏書屋である。その文栄堂の営業文書13点が京都大学附属図書館に収蔵されている。今回は、そのなかの『新本売買明細帳』甲乙を採り上げ、同文書の分析をとおして書籍の品揃え・仕入れ・卸し・小売りの実態を報告。(a)真宗関係の書籍、なかでも安定した需要が見込める『和讃』や『勤行集』などの実用書を積極的に取り扱っていること、(b)つきあいの浅い新興書肆との取り引きは、買い取りではなく「預かり売り」というかたちでおこなわれていたこと、(c)浄土真宗系の仏書屋ではあるが、教義テキストを取り扱うばあいは、真言宗など他宗寺院も取り引きしていたことなどを明らかにした。 3.前掲「研究発表」(3):これまでの日清戦争研究において、一枚刷りや紙製玩具のような消耗品が採り上げられるごとはまずなかったといってよいし、街角や絵双紙屋前のざわめきに耳を傾けることもまた、なかったといってよい。本稿は、日清戦争期において、子どもたちがどのような情報環境にあったのかを検証したものである。同時代を生きた人びとの日記や随筆をもとに、子どもの目線からみた学校や絵双紙屋、街の様子など日常の生活空間を再構築し、子どもたちにとっての日清戦争はお気楽な祭りでしかなかったことを裏付けた。
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Research Products
(3 results)