2006 Fiscal Year Annual Research Report
「無形イメージ」による文学的想像力の研究:モーリス・ブランショと現代文学論の帰趨
Project/Area Number |
05J10330
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
郷原 佳以 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ブランショ / マルロー / 美術館 / マラルメ / ポーラン / ヴァレリー / イメージ / アナクロニズム |
Research Abstract |
モーリス・ブランショの著作を通して文学および芸術における根源的な「イメージ」ないし「想像的なもの」の諸相を探るという本研究の目的に沿って、主として以下の2点について研究を進行した。 1.従来注目されてこなかった、アンドレ・マルローの「想像の美術館」理念をめぐるブランショの批判的論考「<美術館>、<芸術>、<時間>」(1950-51)を仔細に分析し、芸術をめぐる現代の状況にも有効な視点を提供するブランショ独自の美術館論および芸術作品論を取り出した。同時に、このマルロー論のうちに、続けて発表されることになる抽象度の高いイメージ論「想像的なものの二つの解釈」(1951)の萌芽を見出すことにより、イメージ論を明確かつ具体的な次元で説明することができた。以上により、ブランショの文学論と造形芸術論が、ある根源的な「イメージ」をめぐる思考において通底していることを明らかにし、同時に、文学論をより広く芸術論として捉えることで見えてくる可能性を示唆した。 2.前年度の研究で明らかとなった、マラルメの詩学をめぐるヴァレリーとブランショの解釈の差異に基づき、今年度は、ブランショの詩学をさらに明確化すべく、彼のマラルメ論が同時代の批評家ジャン・ポーランを論ずる文脈において提示されることがきわめて多いという事実に注目し、主として40年代の論考を詳細に分析した。ブランショがいかなる点にマラルメとポーランの詩学ないし言語論の共通性を見出しているのかを突き止めることにより、そこから、イメージの思考に基づいたブランショ自身の詩学を抽出するに至った。
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