2006 Fiscal Year Annual Research Report
半導体超格子中の電子波束運動とサブバンド間遷移によるテラヘルツ利得の解明と制御
Project/Area Number |
05J10614
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鵜沼 毅也 東京大学, 生産技術研究所, 特別研究員(PD)
|
Keywords | テラヘルツ / 超格子 / ブロッホ振動 / サブバンド間遷移 / シュタルク梯子 / 量子井戸 |
Research Abstract |
半導体超格子構造におけるテラヘルツ利得の物理的理解とそれに基づいた制御を行うため,以下の研究を行った。 1.ノンドープGaAs系超格子中のプロッホ振動電子について,フェムト秒レーザーを用いたテラヘルツ時間領域分光法によって放射電場波形を計測し,利得に重要な位相緩和の機構や振動の初期位相を議論した。昨年度に観測した位相緩和時問の強い井戸幅依存性から主要な緩和機構を界面ラフネス散乱と推測していたが,この散乱の寄与を微視的に計算することにより実験結果を定量的に説明することに成功し,試料設計の工夫で利得の幅と大きさを決める位相緩和時間を幅広く制御できる可能性を指摘した。この成果についてはApplied Physics Letters誌上等で発表した。また,最大エントロピー法を適用することによりテラヘルツ放射波形の時間原点を正確に決定し,振動の初期位相が通常の半古典的描像から期待されるものとは90度ずれていて交流伝導度スペクトルの分散的形状を反映していることを明らかにした。この成果については第54回応用物理学関係連合講演会で発表した。 2.ドープ超格子/量子井戸中のサブバンド構造を評価するプローブとして重要な赤外吸収と共鳴電子ラマン散乱について,両スペクトルに現れるサブバンド間励起ピークの背後にある物理を考察した。赤外吸収過程においてはどの電子面内波数kでも入射光がサブバンド間共鳴するため,様々なkをもった全ての電子がクーロン相互作用しながら集団励起を形成する。一方,ラマン過程においては1つのkでのみ入射光がバンド間共鳴するため,そのkでの一電子励起が集団励起に比べて強く共鳴増大される。このような考察結果によって,昨年度までに得られた実験結果を定性的に説明し,スペクトルを解釈する上での基礎を固めた。この成果についてはPhysical Review B誌上等で発表した。
|