2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J11215
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
相阪 有理 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 素粒子論 / 超原理論 |
Research Abstract |
本年度は、ゲージ/弦理論対応の検証のために不可欠であるRamond-Ramond背景場中の超弦理論の解析を、N.Berkovitsにより提唱された新しい超ポアンカレ共変的定式化-ピュア・スピノル(PS)形式を用いて行う予定であった。しかし、特別研究員応募時から採用までの間に風間洋一教授(東大総文)と共同で行った研究により、長らく謎であったPS形式の古典的作用を発見し、その作用から、従来天下り的に与えられていたBRST対称性を第一原理的に導出することに成功した[1]。我々の得た作用は、通常のGreen-Schwarz(GS)作用のグラスマン座標場の種類を倍増させると同時に、その増えた自由度を打消す局所対称性を持たせるようにして構成される(ダブル・スピノル(DS)形式)。この局所対称性を適切にゲージ固定することにより新たに増やしたグラスマン座標場を消去すると、我々の作用はGS作用に帰着するため、両者の等価性は明白である。一方で、この局所対称性を作用の正準量子化の過程を通じて保つこともでき、そうすることでPS形式のBRST対称性が得られる。この成果は、PS形式を基礎付けると同時に、非自明背景場中への拡張、11次元超膜理論への拡張などに対して系統的な手掛かりを与える重要な成果であったと考えている。 この成果を受け、本年度は予定を変更し、上に述べたPS形式の古典作用を11次元超膜理論に応用する研究を行い、その成果を論文[2]としてまとめた。11次元超膜理論は、(摂動論的には10次元時空で定義される)超弦理論が持つ非摂動的対称性の一部を11次元ローレンツ対称性と解釈するM理論と密接な関係を持つと考えられている。しかし、従来、超膜理論の解析はGS型の超膜作用をローレンツ非共変的な光円錐ゲージを用いて行われてきたため、肝心の11次元ローレンツ対称性が良く理解されていなかった。そこで我々は、超膜理論を超弦理論のPS形式のごとく超ポアンカレ共変的に定式化することを目指し、DS形式の手法を適用して解析を行った。その結果、超弦理論の場合と同様、超膜理論の古典的ダイナミクスを完全に定める拘束代数を得、そこから古典的BRST演算子を定義する手順を示した。ただし、膜理論の運動方程式が非線型の非常に複雑なものであることが原因で、その代数の量子論的表現を得ることはまだできておらず、今後の課題となっている。 [1]Y.Aisaka and Y.Kazama, Origin of pure spinor formalism, Journal of High Energy Physics 0505(2005)046 [2]Y.Aisaka and Y.Kazama, Towards pure spinor type covariant description of supermembrane: An approach from double spinor formalism, hep-th/0603004
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Research Products
(1 results)