2006 Fiscal Year Annual Research Report
全身接触を持つヒューマノイドの環境に密着した全身運動に関する研究
Project/Area Number |
05J11291
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大村 吉幸 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 全身分布触覚センサ / 等身大ヒューマノイド / 全身接触行動 / ダイナミック全身運動 |
Research Abstract |
等身大ヒューマノイドロボットの全身に実装可能で、ダイナミックな全身運動を行う際の圧力分布の変化を測定可能な触覚センサを昨年度までに開発した。今年度はそれをヒューマノイドの全身接触行動に利用した。従来のヒューマノイドロポットの多くは、足裏や手先のみでの環境との接触を仮定し、全身での接触が可能とはなっていなかった。環境に密着し、環境を利用する新しいヒューマノイドロボットを提案した。それは、全身に曲面形状を持ち、各関節は自重を支えることが可能なトルクを出力可能で、全身の表面には分布型触覚センサを持つ。このような特徴を持つヒューマノイドロボットを全身接触可能なヒューマノイドと呼ぶ。昨年度までに背中部、腹部、臀部、足部の触覚センサの実装を行っていた。今年度はさらに、上腕部、肘部、前腕部、手部、大腿部、脛部の触覚皮膚を作成することで、ほぼ全身を1864個の触覚センサが分布するような触覚システムを完成させた。このシステムを用いてヒューマノイドの全身接触行動を体系化し博士論文としてまとめた。ヒューマノイドの全身接触行動とは、「全身のあらゆる部位における接触を前提とし、その接触状態を直接検知可能な触覚センサの情報に基づいて接触状態を制御することで実現する行動」とした。全身接触行動を用いることで、ヒューマノイドのパフォーマンスを向上させることができる。例えば、モーメントアームを短縮し、環境と密着しバランス性を高めることで重量物の操作が可能となる。また、環境とのさまざまな接触や拘束を利用することで、従来のヒューマノイドでは不可能な状態遷移を可能とする。全身接触行動は、環境が不変でヒューマノイドロボットの位置・姿勢が変化する場合と環境の物体の位置・姿勢が変化する場合の2つに分けることができ、前者の例としてダイナミックな起き上がり行動を扱い、後者の例として重量物体の操作を扱った。前者は、背中部や臀部の転がりを利用した動作であり、背中の触覚センサから得られる接触パターンにより、ロボットの姿勢情報を得、これを利用して脚の駆動のタイミングを調整することで起き上がりを実現した。後者は、触覚センサから得られる接触位置情報に基づき、環境の幾何情報を得、これを動作生成に用いることで、適切に物体の位置をコントロールすることで、力ずくではなく、物体を持ち上げることが可能となった。このように、本研究において、全身接触行動の有用性を示し、全身接触行動の前提となる全身接触可能なヒューマノイドの開発法として、全身分布触覚センサの構成法を確立し、触覚情報に基づいた全身接触行動の実現法を確立し、博士論文としてまとめた。
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