ヒマラヤ雪氷圏における地球温暖化による影響評価の基礎的研究

1995 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 06041051
• Research Institution: Nagoya University
• Principal Investigator: 上田 豊 名古屋大学, 大気水圏科学研究所, 教授 (80091164)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 姚 檀棟 蘭州氷河凍土研究所, 教授 ; 蒲 建辰 蘭州氷河凍土研究所, 助教授 ; SHANKAR K. ネパール水文気象局, 局長 ; BAJRACHARYA オー ネパール水文気象局, 雪氷水文次長 ; 青木 輝夫 気象研究所, 物理気象研究部, 研究官 ; 伏見 碩二 滋賀県立大学, 環境科学部, 教授 (10109358) ; 窪田 順平 東京農工大学, 農学部, 助手 (90195503) ; 幸島 司郎 東京工業大学, 理学部, 助教授 (60183802) ; 岩田 修二 東京都立大学, 理学部, 教授 (60117695) ; 知北 和久 北海道大学, 理学部, 助教授 (70142685) ; 樋口 敬二 中部大学, 国際関係学部, 教授 (50022512) ; 瀬古 勝基 名古屋大学, 大気水圏科学研究所, 助手 (70196971) ; 大畑 哲夫 滋賀県立大学, 環境科学部, 助教授 (90152230) ; 中尾 正義 名古屋大学, 大気水圏科学研究所, 助教授 (90142695)
• Keywords: ヒマラヤ雪氷圏 / 地球温暖化 / 影響評価 / 氷河変動 / 氷河湖 / モンスーン / 衛星データ解析 / ネパール

Research Abstract

1.自動観測装置の点検維持
昨年度に設置した装置の点検保守を行うとともに、データの回収を行った。エベレスト山域からの自動気象観測から、同地域で1995年11月に発生した雪崩による多数の死者を出した異常豪雪の気候学的解析にも役立つ貴重なデータが得られた。
2.氷河変動調査
過去に観測した氷河の最近の変動の実態観測を行った。
調査したほとんどすべての氷河に末端の後退が、最近になって急速なことが認められた。しかも単なる末端の後退にとどまらず、氷の厚さの減少も著しい。表面を堆積物で覆われた氷河(クンブ氷河)の場合には、活動末端付近の消耗が非常に顕著であった。
3.氷河変動過程観測
堆積物に覆われた氷河表面に存在する氷河湖が氷河の消耗に果たす役割の観測を行った。その結果、氷河の融解に大きく寄与する氷河湖の中に、その物理学的、化学的、生物学的特徴によって2種類のものがあることが明らかとなった。
4.降水サンプルの解析
採取した降雪降雨サンプルの解析の結果、ヒマラヤ南面においては、水の軽い安定同位体が冬期より夏期に多く、モンスーンの降水過程による水蒸気の分別が顕著に認められた。これに対して北面では、ヒマラヤから遠ざかるにつれてこの傾向が薄れ、モンスーンの影響の地域特性が検出できた。
5.衛星データ解析アルゴリズムの開発
可視光とマイクロ波のデータを組み合わせ、氷河表面の汚れが鉱物粒子か微生物かの識別、アルベドへの雪粒子径と汚れの寄与の区別、積雪表面の融解水の存在の検出などのアルゴリズムを開発した。

Research Products

• [Publications] Ageta,Y. et al.: "Characteristics of mass balance of summeraccumulation type glaciers in the Himalayas and Tibetan Plateau." Zeitschrift fur Gletscherkunde und Glazialgeologie. 31(印刷中). (1995)
• [Publications] Ageta, Y. et al.: "Some aspects of mass balance of Xiao Dongkemadi Glacier in the Tanggula Mountains on Qingzang Plateau, 1989-94." Journal of Glaciology and Geocryology. 18(予定). (1996)
• [Publications] Fujii. Y. et al.: "Glaciological research in Hidden Valley, Mukut Himal in 1994." Bulletin of Glacier Research. 14(予定). (1996)
• [Publications] Ueno,K. et al.: "Establishment of GEN Automatic Weather Station (AWS) in Khumbu Himal." Bulletin of Glacier Research. 14(予定). (1996)
• [Publications] Rana,B,et al.: "Runoff modeling of a river basin with a debris-covered glacier in Langtang Velley, Nepal Himalaya." Bulletin of Glacier Research. 14(予定). (1996)
• [Publications] Fujita,K. et al.: "Change of glaciers in Hidden Valley, Mukut Himal, Nepal Himalaya from 1974 to 1994" Journal of Glaciology. 42(予定). (1996)
• [Publications] 中尾正義ほか: "ヒマラヤ雪氷圏における地球温暖化による影響評価の基礎的研究 -課題と展望-" 名古屋大学大気水圏科学研究所, 136 (1995)