1994 Fiscal Year Final Research Report Summary
Project/Area Number |
06041103
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Research Category |
Grant-in-Aid for international Scientific Research
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | Field Research |
Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
立山 龍彦 東海大学, 文明研究所, 教授 (90119686)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
朴 元奎 東海大学, 文明研究所, 非常勤講師
竹村 典良 桐蔭学園横浜大学, 法学部, 専任講師 (60257425)
塩屋 保 敬和学園大学, 助教授 (70257434)
池田 良彦 東海大学, 開発工学部, 助教授 (60212792)
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Project Period (FY) |
1994
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Keywords | 高齢化社会 / 高齢犯罪者 / 高齢受刑者 / 高齢被害者 / 高齢者虐待 / 尊厳死 / 安楽死 / 死ぬ権利 |
Research Abstract |
1.社会福祉的政策をとり、高齢者に対する豊富な経験が蓄積されているニュージーランドおよびオーストラリアにおいて、そこに存在する法的問題を明らかにすることにより、両国の直面する現況を認識し、それらを比較法的観点から分析することで、我が国において今後発生し解決を追られるであろう法的問題を予測し、その具体的解決方法を検討することが重要となる。 2.先ず、刑事法の分野では高齢者犯罪の現状および高齢受刑者に対する処遇が問題となる。我が国に比較すると刑事施設内における高齢受刑者数は極めて少ないが、それはCommunity Correctionsいわゆる社会内処遇が非常に重要されていることの反映であろう。もちろん凶悪犯罪の場合は刑務所に収容されるが、それは最後の手段であり、処遇はコミュニティーの責任であるとの認識が一般である。在宅拘禁、社会奉仕、週末拘禁、平日拘禁等の制度があり、特に高齢者が罪を犯しても刑務所に収容される代わりに、このような刑罰を受けることにる場合が多い。 刑務所内の高齢受刑者の多くは性犯罪者であり、一般の棟からは隔離されている場合が通常である。収容されている高齢受刑者の場合、身体が不自由になってきた際、たとえば車椅子が必要になれば誰がその面倒を見るかが問題となる。介護のためのボランティアを若年受刑者から募ることも一つの方法であろう。特に高齢者が初犯として刑務所に収容される場合は、肉体的配慮のみならず精神的、心理的配慮が重要となる。最近ニュージーランドでは、高齢受刑者に対する新たな政策を明らかにし、高齢受刑者への配慮を示した。 3.高齢被害者問題に関しては、その具体的な救援活動、プログラムが中心となる。特に(1)被害者補償制度、(2)被害回復プログラム、(3)被害者・加害者調停プログラム、(4)被害者影響声明プログラム、(5)環境設計による犯罪予防、(6)地域社会による防犯プログラム(近隣監視プログラム)、(7)市民レベルでの民間ボランティア団体による被害者援助プログラム等である。 他方、家庭内暴力の一つとしての「高齢者虐待」も無視できない。両国の施策はどうであろうか。我が国においても高齢受刑者の新入所者犯罪の第一位は家庭内殺人である。虐待に耐え切れなかった場合も多いであろう。被害者学的観点からの対策が必要となる。 4.自己決定権に基づく治療拒否が問題になるのが、尊厳死の場合である。オーストラリアで最初の尊厳死法を制定した南オーストラリア州の“Natural Death Act,1983"の立法経過を明らかにすることによって、尊厳死に対するオーストラリア人の意識および制度の運用状況を考察する。そこには「生」と「死」に関する彼我の認識の差も浮かび上がってくるであろう。それが法制定に大きな影響力をもってくることになる。 植物患者の多くは高齢者である。「死ぬ権利」の拡大は、特に家族が患者の自己決定権を代行するときに問題となろう。「生物としての人間の生命は、人格との結び付きにおいて尊厳を獲得するものであって、その結び付きを欠き自意識を失った生物体は無価値である」と判断して良いのだろうか。 アメリカでは40以上の州で尊厳死法が制定されており、連邦最高裁判所も「死ぬ権利」を認めたが、我が国では何故尊厳死に関する真剣な議論がなされる土壌がないのであろうか。国民健康保健制度の存する我が国では、植物患者を身内に抱えても、財政的な圧迫を受けることはないことにその理由を見いだすとすれば、オーストラリアの判断の基準はどこにあるのであろうか。この点を明確にして行きたい。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 竹村典良: "「方法序説」:高齢者犯罪/処過問題研究" 犯罪と非行. 95. 72-101 (1993)
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[Publications] 竹村典良: "「刑罰」と「福祉」の複合、融合、接合?" 犯罪と非行. 99. 90-106 (1994)
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[Publications] ニルス・クリスティー著 立山龍彦訳: "障害者に施設は必要か.特別な介護が必要な人々のための共同生活体" 東海大学出版会, 154 (1994)
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[Publications] 立山龍彦: "下村康正先生古稀祝賀論文集(フィンランドの行刑制度)" 成文堂, (1995)
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[Publications] 立山龍彦編著: "高齢化社会の法的側面(仮題)" 東海大学出版会, (1995)