1996 Fiscal Year Annual Research Report
東南アジアの海域世界における環境利用とその現代的変容の研究
Project/Area Number |
06041127
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
秋道 智彌 国立民族学博物館, 第一研究部, 教授 (60113429)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
須田 一弘 北海学園大学, 人文学部, 助教授 (00222068)
野中 健一 三重大学, 人文学部, 助教授 (20241284)
田和 正孝 関西学院大学, 文学部, 助教授 (30217210)
崎山 理 国立民族学博物館, 第五研究部, 教授 (10030131)
後藤 明 宮城学院女子大学, 学芸学部, 教授 (40205589)
口蔵 幸雄 岐阜大学, 教養部, 教授 (10153298)
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Keywords | 資源 / エスノ・ネットワーク / 変容 / 移動 / マングローブ / サンゴ礁 / 海域世界 / インドネシア |
Research Abstract |
本年度は、3年計画の最終年度にあたり、過去2年度における調査の実績を踏まえ、総合的かつ集中的な調査を実施した。 *スラウェシ島 (1)南西部のウジュンパンダン沖にある小サンゴ礁島において、ブギス、マカッサル人による水産資源利用について定量的・定性的な資料の収集をおこなった(田和正孝)。 (2)北部のメナド沖にあるナイン島においてバジャウ人の環境利用と水産資源利用についての調査をおこなった。さらにスラウェシ島中部にあるバンガイ諸島において、バジャウ人の水産資源利用とその変容についての調査を実施した(秋道智彌)。 *ティドレ島 ティドレ島では、ティドレ島に附属するマレ島において、環境利用と土器製作と交易、ティドレ島における資源利用の比較調査をおこなった(後藤明)。 *セラム島 (1)セラム島において、言語人類学的な観点から、環境認識にかかわる調査をおこなった(崎山理)。 (2)セラム島において、サゴヤシ、ココヤシ、チョウジなどの樹木栽培作物利用、農耕、漁撈、採集などについての時間研究と栄養分析をおこなった(口蔵幸雄、須田一弘)。さらに昆虫の利用についての調査を実施した(野中健一)。 以上の比較調査をもとに国立民族学博物館において研究会を開催し、東インドネシアにおける環境利用についてとくに90年代以降、商品化をめぐる経済活動が住民の生活時間や出稼ぎの動向に大きな変化をもたらしていることが判明した。とくに水産資源としてのハタ、アジ、海藻、小型のイカなどの流通について興味ある事例を分析できた。海藻養殖業の急成長によるサンゴ礁海域の変化と人口移動などは環境利用の問題を村レベルで詳細な経過を追跡する必要のあることが判明した。 マルク地方と周囲の地域は小型増えによる住民の交易活動によって現在も結ばれており、本研究の重要な課題であるエスノ・ネットワークについていくつもの事例を集めることができた。 マングローブの利用について、保護と伐採をめぐる対立が重要な環境問題としてあり、今後の継続調査が必要であることがわかった。 研究の成果は単行本や論文として出版計画を立案し、その一部はすでに出版されている。
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Research Products
(19 results)
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[Publications] 秋道智彌: "東南アジア・オセアニアの水産資源とエスノ・ネットワーク〜しきたりと変容する漁撈文化" イルカとナマコと海人たち-熱帯の漁撈文化誌. 7-50 (1995)
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[Publications] 秋道智彌 大塚柳太郎: "Introduction to the Proceeding of Symposium,'Sustainable Development and Anthoropology'" Antholopological Science. 103(4). 309-310 (1995)
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[Publications] 秋道智彌: "Indigenous Resource Management and Sustainable Development : Case Studies from Papua New Guinea and Indonesia" Anthropological Science. 103(4). 321-327 (1995)
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[Publications] 秋道智彌 Dedi A.SUPRIADI: "Marine Resource Use in the Bajo of North Sulawesi and Maluku,Indonesia." Senri Ethnological Studies. 42. 105-119 (1996)
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[Publications] 秋道智彌 MANTJORO,Eddy: "Sea Tenure and Its Transformation in the Sangihe Islands of North Sulawesi,Indonesia : The Seke Purse-seine Fishery" Senri Ethnological Studies. 42. 121-146 (1996)
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[Publications] 秋道智彌: "東南アジア・オセアニアにおける小規模漁業と資源利用" 南太平洋海域調査研究報告. 28. 13-21 (1996)
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[Publications] 秋道智彌: "インドネシア東部における入漁問題に関する若干の考察" 龍谷大学経済学論集. 35巻4号. 21-40 (1996)
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[Publications] 秋道智彌: "アジアの食文化-東南アジア・オセアニアの海から" 季刊ヴェスタVESTA. 26巻. 4-10 (1996)
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[Publications] 秋道智彌: "Coastal Foragers in Transition" Senri Ethnological Studies. 42. 105-119 (1996)
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[Publications] 後藤明: "インドネシア・マレ島における土器の製作と流通" 宮城学院女子大学人文社会科学研究所論叢. 5巻. 1-29 (1996)
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[Publications] 崎山理: "複合的な言語状況" 秋道智彌ほか(編)ソロモン諸島の生活誌. 36-48 (1996)
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[Publications] 田和正孝: "国際海峡の漁業景観-小規模漁民による水産資源利用の諸相" 関西学院大学産研叢書 杉谷滋(編著)アジアの近代化と国家形成. 20巻. (1996)
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[Publications] 後藤明: "東部インドネシア・ティドレ地方の流通システムについて" 宮城学院女子大学人文社会科学研究所論叢. 6巻. 43-74 (1997)
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[Publications] 後藤明: "おかずから国際商品まで-ランガランガの多様な水産資源利用-" 宮城学院女子大学キリスト教文化研究所年報. 25巻. (1997)
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[Publications] 崎山理: "サマ諸語比較研究" 国立民族学博物館研究報告. (1997)
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[Publications] 崎山理: "ヤラハタン語(セラム島)の系統的位置" 国立民族学博物館研究報告. (1997)
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[Publications] 秋道智彌: "イルカとナマコと海人たち-熱帯の漁撈文化誌" 日本放送出版協会, 245 (1995)
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[Publications] 秋道智彌: "海洋民族学 海のナチュラリストたち" 東京大学出版会, 260 (1995)
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[Publications] 田和正孝: "漁場利用の生態" 九州大学出版会, 402 (1997)