1994 Fiscal Year Annual Research Report
法律エキスパート・システムと概念法学における法的判断
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06207206
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
守屋 正通 香川大学, 法学部, 教授 (10065162)
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Keywords | エキスパート・システム / 法的判断 / 概念法学 / 論理学史 / P.Ramus / Ch.Wolff |
Research Abstract |
法律エクスパート・システム(以下「法律ES」)の推進派も批判派も共に、これを「新概念法学」と特徴づける。奇妙なことであるが、推進派は「新」に意味をもたせ、批判派は「(旧)概念法学」に意味をもたせる。何れにせよ、概念法学は収支決算のついた過去の遺物でないことになる。 概念法学は法律が全体として完結している(経験的に完全である)ことを前提にした上で、予期されなかった事実の発生によって法律の欠缺が生じたとき、次のような法律構成で欠缺補充を考える。法的概念を法命題から切り離して操作し、補充されるべき法律を構成する。この場合、かかる手続きが論理的に妥当だ、という了解(誤解)が前提となっている(法律は創造されてはならないから、補充されるべき法律は既存の法律の論理的帰結でなければならない)。しかも、このように前提された誤解については従来殆ど問題にされることはなかった。しかし、人文主義法学・歴史法学・パンデクテン法学の法学史は16世紀・人文主義に始まる論理の誤解と手を携えていたのである。a P.Ramsの修辞学的論理学、b Ch.Wolffの汎論理主義、c 論理学の認識論・方法論化。 他方、法律ESにも幾つか問題がある。ESの中では法的構成は与件とされ、ESの推論機構に関心が集中している。しかし、法律構成と事案の包摂機構は必然的に法的推論の流れ(flow chart)を決めるから、ESにおける法律構成の手法は検討を要する。今後改善が(可能だとして)必要と思われる点を若干挙げる。a 現在のESでは規範様相を用いていないが、これは不可欠であろう。b しかも、確定的義務様相だけではなく仮の義務様相が必要である。c 現在のESには〈条件論理〉が付加されねばならない。d 推論機構と包摂機構との分離が望ましい。e プログラムのバグ診断のみでなく、法的構成の評価機構の研究が必要と思われる。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 守屋正通: "法と論理・方法論-論理の誤解を中心とした序説-(2)" 香川法学. 14. 815-869 (1995)
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[Publications] 守屋正通: "法律エクスパート・システムと概念法学における法的判断" 法律エクスパートシステムの開発研究'94. (1995)
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[Publications] 守屋正通: "教育におけるコンピュータの利用について(2)" 香大法学部『企業法務から見た実践的法学教育』. (1995)