1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06208201
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤田 覚 東京大学, 史料編纂所, 教授 (20092322)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 孝之 東京大学, 史料編さん所, 助手 (30170757)
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Keywords | 琉球使節 / 朝鮮通信使 / 国役金 / 助郷人馬 / 高木家 / 宿場 / 美濃代官 / 勘定所 |
Research Abstract |
まず地方史誌で琉球使節をどのように扱っているのかを検討したが、その本文編では、朝鮮通信使についてはふれるが琉球使節についてはほとんどふれず、また史料編でも朝鮮通信使関係が多く、琉球使節については国役金の負担免除・軽減に関する願書がごく少数収録されている程度で、ほとんど関心が払われていない現状が明らかになった。大名家などに伝存した史料でも、江戸城内の謁見や音楽に関する記録が多く、朝鮮通信使に関する一件記録を作成しているのと対照的である。そこで、陸上を通行し国役賦課の対象となった東海の8カ国の現地に残された史料について調査したが、地域的特徴でもあるが大量の藩政史料を残した大名に乏しく、まとまった形の一件記録が残されていないことが明かとなった。しかし、草津宿・池鯉鮒宿・赤坂宿などの宿場および宿場を領内ないし近辺に持つ大名、例えば膳所藩、田原藩などの藩政日記には通行の記事が散見される。琉球使節国役に関しては、その賦課割合などは田原藩日記などにもみられるが、幕府からの指示と勘定所への納入までの処理に関して詳細な史料を残したのが、美濃の交代寄合宿高木家である。同家史料は、亨保期以降幕末まで国役金関係史料を膨大に残し、具体的な納入方法が明確になる貴重な史料である。それによると、琉球使節通行に必要な人馬は業者による請負方式で、その請負総額が国役として賦課されるが、老中の指示をうけた勘定所が高木家に賦課割合・総額・納入日限・納入場所を通達し、高木家は近江または美濃の幕府代官と具体的な交渉を行い、領内に賦課して徴集した国役金を代官に納入し、その受領証を江戸の勘定所に送り領収証を交付されて完了という納入システムであったことが判明した。この方式は、実は朝鮮通信使の場合とほぼ同じであり、大名・旗本が幕府に金銭を納入するパターンとして一般化されるものであることも明かとなった。
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