1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06209203
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
下山 晃 筑波大学, 化学系, 教授 (30134084)
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Keywords | 星間分子 / アセトニトリル-水系 / 紫外線照射 / アミノ酸 / カルボン酸 / 隕石有機物 |
Research Abstract |
星間分子の有機化合物を隕石の有機化合物と比べると、種類の数は極めて少ない。しかし、星間分子として検出されていない有機化合物でも存在している可能性はあり、その可能性を検討することは重要である。この目的のため、我々は星間分子としてのアミノ酸とカルボン酸の生成についてのシミュレーション実験を行い、それらの存在についての可能性を考察した。 実験では、反応物質としてアセトニトリル-水、ベンゼン-アンモニアー水、および、グラファイト-アンモニアー水の系に対して常温と77Kの温度下において低圧水銀灯を用いて紫外線の照射行い、アミノ酸とカルボン酸の分析をおこなった。その結果、検出されたアミノ酸が示す特徴は、1)タンパク性アミノ酸であるグリシン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸などと、非タンパク性アミノ酸のサルコシン、β-アラニン、α-,β-,とγ-アミノ酪酸、α-とβ-アミノ-i-酪酸などが含まれていること、2)光学異性体をもつアミノ酸はアラニンをはじめとし、すべてのものでD-体とL-体がほぼ等量検出され、それらのアミノ酸がラセミ体で含まれていること、が判明した。この結果は、検出されたアミノ酸が非生物的な生成によるものであることを明確に示しており、間違いなく本実験による紫外線照射により生成したアミノ酸であることを示している。このようなアミノ酸の特徴をもち自然界に存在する物質として炭素質隕石が知られており、本実験で生成したアミノ酸よりも多くの種類のものが既に報告されている。 アセトニトリル-水に紫外線を1時間照射し、生成したモノ-とジカルボン酸について同定と定量を行ったので、それらの結果、どちらも炭素数が2から6までのカルボン酸が生成し、それらの特徴は炭素数が多くなると生成量が減少することである。また、直鎖構造のものについては生成量が炭素数に対して指数関数的に減少している。同様な関係は、炭素質隕石中に存在するジカルボン酸にもみられ、本研究で行ったシミュレーション実験の有用性が認められた。
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[Publications] A.Shimoyama,et al.: "Formation of Carboxylic Acids from Elemental Carbon and Water by Arc-Discharge Experiments." Bull.Chem.Soc.Jpn.67. 257-259 (1994)
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[Publications] A.Shimoyama and R.Shigematsu: "Dicarboxylic Acids in the Murchison and Yamato-791198 Carbonaceous Chondrites." Chemistry Letters. 1994. 523-526 (1994)
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[Publications] A.Shimoyama,et al.: "A New Parameter for Maturity Assessment of Organic Materials in Sedements Based on Thermal Isomerization of Monomethylphenanthrenes." Chemistry Letters. 1994. 1917-1920 (1994)
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[Publications] 下山 晃・三田 肇: "宇宙化学における炭素質隕石の有機物." 地球科学. 48. 433-446 (1994)
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[Publications] 下山 晃: "隕石有機物の右と左" 数理科学. 379. 30-34 (1995)