1994 Fiscal Year Annual Research Report
感性コミュニケーションにおける顔の役割に関する心理学的研究
Project/Area Number |
06212103
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Research Institution | Otemon Gakuin University |
Principal Investigator |
吉川 左紀子 追手門学院大学, 文学部, 助教授 (40158407)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 真 宇都宮大学, 国際学部, 講師 (50231478)
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Keywords | 顔 / 表情 / コミュニケーション / 発話行動 |
Research Abstract |
本研究では、初対面の相手に要求,質問,謝罪,抗議という4種の課題状況で話かけるという状況を模擬した実験を行ない,相手の顔から読みとられる情報(年齢,表情)が発話行動にどのような影響をおよぼすのかを多面的に検討した.被験者の発話行動に関する従属変数としては,発話の文節数,敬語・丁寧語の出現パターン,相手の顔を知覚してから発話を開始するまでの時間,発話後に行う「話しかけやすさ」の評定,「発話の自然さ」の評定,発話の流暢さであった。 被験者は48名の大学生であった.各被験者は,12枚の人物(大学生・40代成人)が怒り,幸福,中性(真顔)の表情を表出した顔写真に対し,「ペンを借りる」「郵便局までの道を尋ねる」「駐車場でぶつけてしまった車の持主に謝る」「前の晩にうるさくしていた隣人に注意する」の4種の課題状況で,できるだけ自然な表現で話しかける課題を行った.課題の遂行中の被験者の表情,発話表現は小型ビデオカメラで録画した. 被験者の発話行動を分析し,次の結果が得られた. (1)発話表現の文節数は課題状況によって異なるが,相手の年齢,表情による違いはみられない.(2)発話開始時間は,同じ課題状況であっても相手の表情により異なった.相手が幸福顔,中性顔である時よりも怒り顔の時には発話開始時間が遅くなった.:(3)発話行動の後に行なった「話しかけやすさ」「話しかけの自然さ」の自己評価においても,課題状況による違いと相手の表情による違いがみられ,謝罪や抗議は質問や要求よりも話しかけにくく,また相手が幸福顔である場合には話しかけやすく、怒りを表出している場合には話しかけにくいと評価された.また,課題状況と相手の表情の間に交互作用がみられ,謝罪では幸福顔に対する話しかけやすさが減じる傾向がみられた.
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[Publications] 中村真、吉川左紀子: "意図的情動表出とその認知I:表出に及ぼす情動カテゴリーと状況の効果" 日本心理学会第58回大会発表論文集. 934 (1994)
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[Publications] 吉川左紀子、中村真: "意図的情動表出とその認知II:情動の種類及び強度と話しかけやすさの関係" 日本心理学会第58回大会発表論文集. 935 (1994)
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[Publications] 中村真、吉川左紀子: "意図的情動表出とその認知III:表出者と評定者の性別の効果" 日本社会心理学会第35回大会発表論文集. 34-37 (1994)
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[Publications] 吉川左紀子、中村真: "顔・表情が発話行動に及ぼす影響" 日本認知科学会第12回大会. (発表予定).