1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06212212
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中村 敏枝 大阪大学, 人間科学部, 助教授 (00029688)
|
Keywords | “間"の感性 / “間"と呼吸 / 情報の送り手の呼吸 / 情報の受け手の呼吸 / スピーチにおける“間" / 音楽演奏における“間" / “間"の効果 / 「いきがあう」現象 |
Research Abstract |
1.聴取時の呼吸測定実験 種々の音を聴取中の呼吸測定を行った.用いた音は全部で7種類である.宮下富実夫作曲「地球瞑想」は心理的リラックスを目的に作られた音楽である.これを聴いた被験者全員が「快い」と評定している(7段階尺度で6).これを聴取中の被験者の呼吸は非常に穏やかであることがわかる.心理音「精神を圧する感じ」は被験者の評定平均値が3.5で,どちらかといえば不快な印象を与える音である.これを聴取中の呼吸は不安定な波形変化を見せている.鬼太鼓座による「三国幻想曲」は迫力溢れる勇壮な太鼓の音が響くリズミカルな演奏である.聴取中の呼吸も大きく,波形は規則的に躍動している.このように,音楽の与える印象と呼吸波形の間には密接な関係のあることがわかる. 2.対面朗読中の話し手と聞き手の呼吸 対面状態で,母親が子に宮沢賢治作「オッペルと像」,「ドングリと山ねこ」を読み聞かせている時の両者の呼吸を測定した.“間"の箇所において,息を止める,“間"と同期をとるなど呼吸波形に顕著な変化が見られた.また,それ以外の箇所でも話し手と聞き手の呼吸波形の変化点が一致する箇所が多く見出された.情報の与え手と受け手の間に呼吸を介したコミュニケーションが存在することを示唆するものといえよう.話の内容が持つ論理的意味情報や感性情報に加えて,呼吸の一致から生じる感性情報のコミュニケーション,これが「語り」や会話の魅力の一因となっているのであろう.そのような一致を導き出すのに“間"が大きく貢献しているといえる.
|
-
[Publications] 中村敏江: "音楽・声楽における“間(ま)"の効果" 日本心理学会第58回大会発表論文集. 738 (1994)
-
[Publications] 中村敏江: "「間」の心理学" 大阪大学放送講座「ゆらぎの人間科学」. 77-92 (1994)
-
[Publications] 中村敏江: "音楽における「間」と呼吸について" 日本音響学会音楽音響研究委員会試料MA94-16. 1-8 (1994)
-
[Publications] 中村敏江: "メディアにおける“間(ま)"の心理学的研究" 重点領域研究「感性情報」 B班第2回班会議・グループ発表資料. (1994)
-
[Publications] 中村敏江: "メディアにおける“間(ま)"の心理学的研究" 重点領域研究「感性情報」 第2回全体会議予稿集. 76-79 (1995)