1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06213216
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
松尾 崇 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教授 (00165771)
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Keywords | バイオメカニクス / 血流 / 血管分岐 / 最適原理 |
Research Abstract |
本研究では血管の幾何学的形態とその機能的意義の解明を目的として,血管の幾何学的計測結果に力学的検討を加えた.動物の脳,腎臓,心臓,消化器,耳の血管鋳型および生理的状態でネコ脳表の血管,鶏胚の周りに発生する血管の幾何学的計測(血管径,長さ,分岐の角度)を行った.血管の幾何学的形態は部位による差が大きく,特にネコの脳では顕著な曲がりのあることが明らかになった.血管分岐での「血管径-分岐角度」には相関関係があり,この相関は分岐する2つの流れの運動量のつりあいを仮定することにより説明しうることが明らかになった.つまり血管の分岐形態は分岐近傍での流体力学的条件の影響を受けていると考えられる.従来,最適原理により血管の分岐形態を説明しうると考えられて来た.しかし今回,この原理を基にした理論的導出を検討した結果,血管の長さを考慮していないため,血管の曲がりを説明できないことが明らかになった.さらに,脳血管の曲がりの生理学的な意義を検討するため,内頚動脈から枝分かれして脳表を走り頭頂葉に分布する血管のルートの沿って血管径と長さを測った.この結果にHagen-Poiseuilleの法則およびFahreaeus-Lindqvist効果を考慮した式を適用し,「血管径-血圧降下」の関係を求めた.その結果,ネコの脳では大きな血管での圧力降下が大きく,内頚動脈から約100ミクロンの細動脈に至る間に,全体の50%程度にまで低下することが分かった.この結果はマイクロピペットを用いた血圧測定の結果とよい一致を示した.従来,血圧降下は大部分細動脈で起こると考えられてきたが,むしろ部位・臓器により大きく異なることが示唆された.以上の結果は,血管の形態は所属する臓器の機能を反映した圧力損失を伴う管路系として理解すべきであることを示している.
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[Publications] 松尾崇: "血管構築の定量的評価に関する研究" 難治疾患研究所年報. 21. 257-258 (1994)
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[Publications] 松尾崇: "血管の最適構築に関する理論について" 日本バイオレオロジー学会年会抄録集. 17. 43 (1994)
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[Publications] 松尾崇: "バイオレオロジーとフラクタル" 日本バイオレオロジー学会誌. 8. 112-120 (1994)
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[Publications] Takashi Matsuo: "Quantitative morphology of arterial casts" Biofluid Mechanics (D. Liepsch edt.). 181-186 (1994)
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[Publications] Takashi Matsuo: "Design of the arterial tree" Second World congress of Biomechanics, Abstracts volume 1.217 (1994)
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[Publications] 松尾崇: "生体のフラクタル構造" 日本バイオメカニズム学会誌. 19(印刷中). (1995)