1994 Fiscal Year Annual Research Report
超臨界流体中の異性化反応におけるクラマ-ス反転現象の検証
Project/Area Number |
06214213
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
原 公彦 京都大学, 理学部, 講師 (80025436)
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Keywords | 超臨界流体 / 光異性化反応 / ビニルアントラセン / 蛍光スペクトル / 蛍光寿命 / 圧力効果 / 溶媒粘性効果 |
Research Abstract |
本研究は,2-ビニルアントラセン(2VA)のS_1励起状態でのs-cis⇔s-trans光異性化反応を対象として,超臨界流体を反応媒体として利用した低粘性領域から,高圧液相媒体の高粘性領域に至る広範囲な粘性領域での異性化の速度定数を決定行し,クラマ-ス反転現象を実験的に検証するのが究極の目的である。 低粘性媒体は,超臨界エタン(6 - 10 MPa,323K)および超臨界CO_2である。一方,液相媒体はn-アルカン(ペンタン,ヘキサン,オクタン)溶媒(〜10^<-5>M)で,温度303 K,圧力500 MPaまでの条件で異性化の速度定数(k_f)の圧力依存性を測定した。k_fを求めるために,定常光による蛍光スペクトルの測定と蛍光寿命の測定を行った。蛍光寿命の測定はTi-Sapphireレーザーを励起光源とした時間分解光量子計数(TCSPC)法(70 ps fwhm)である。 超臨界媒体中では,溶媒粘性の増加と共にk_fは増大する。それに対して,高圧液相領域でk_fは単調に減少する。すなわち,低粘性におけるエネルギーの平衡化が律速の領域から,高粘性における拡散が律速となる領域へと移行する"クラマ-ス反転"現象が観測された。 この反転に伴うk_fの変化の挙動について,k_f^<-1>が両極限の速度定数の逆数の和の形で全粘性領域にわたる実験結果を再現することができた。このとき,液相と気相の活性化エネルギー差として1〜2 kJ/molが得られた。また,高圧液相領域において,活性化体積についての考察も行っている。
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[Publications] 原 公彦: "高圧ガス媒体の異性化反応" 高圧ガス. 31. 31-37 (1994)
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[Publications] Kimihiko HARA: "Picosecond Kinetics of the Excited State of 4-(N,N-dimethylamino)triphenylphosphine at High Pressures" Chemical Physics Letters. 225. 381-385 (1994)