1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06218229
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
菅野 忠 明治学院大学, 一般教育部, 助教授 (60134657)
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Keywords | 分子磁性 / 有機磁性体 / 磁気秩序 / ミュオンスピン回転 / 強磁性磁化過程 / 有機ラジカル |
Research Abstract |
本年度は、1.分子間強磁性相互作用を示す有機中性ラジカルの長距離磁気秩序および磁気構造を、零磁場ミュオンスピン回転(μSR)および交流磁化率を手段とし、X線構造解析によって求めた結晶内の分子配向を参考にして検討した。2.有機強磁性体における技術磁化過程を調べた例はほとんどないので、μSRを手段として有機強磁性p-ニトロフェニルニトロニルニトロキシド(p-NPNN)の技術磁化過程を追跡した。3.ニトロニルニトロキシド誘導体を新たに合成し、磁化率の温度依存性および低温における等温磁化曲線を測定した。これらの実験により以下の結果を得た。1.単結晶μSRおよび交流磁化率の温度依存性測定に基いて、分子間強磁性相互作用を示す3-キノリル-およびp-ピリジル-ニトロニルニトロキシド(3-QNNN-およびp-PYNN)の、0.21Kおよび0.09K以下の長距離磁気秩序状態におけるスピン磁気モーメントの結晶内配向を検討し、3-QNNNでは強磁性磁気秩序ではなくcant磁性(弱い強磁性)磁気秩序が、p-PYNNでは〔101〕方向に沿った一次元鎖内で強磁性的スピン配列が生じ、各鎖内の強磁性自発磁化がより弱い鎖間相互作用を通して結晶内で乱雑方向を向いていると考えられることを示した。2.p-NPNNへの入射ミュオンスピンに平行な方向に外部磁場B_0を印加すると、B_0が増大するにつれ、まず20G以上で磁壁の移動による磁区の拡大縮小が起こり始め、次いで50G以上で磁区内の自発磁化の回転が生じ、B_0が500Gに達するまでに全磁化の飽和が起こる事を明らかにした。以上示したような技術磁化過程のμSR測定による追跡は、μSR測定の時間分解能の関係で、内部磁場のあまり大きくならない分子磁性体にむしろ適した手法である。3.1-ナフチルニトロニルニトロキシド(1-NAPNN)はWeiss定数が+0.20Kの強磁性相互作用を示し、2-フランカルボン酸誘導体において強磁性と反強磁性相互作用が共存することを見出した。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] S.J.Blundell: "Observation of a magnetic transition in para-pyridyl nitronyl nitroxide using zero-field μSR" Solid State Communications. 92. 569-572 (1994)
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[Publications] 菅野 忠: "分子結晶のダイナミックス.8.物性の立場から.8-2.分子磁性" 日本結晶学会誌. 37. 318-326 (1995)
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[Publications] T.Sugano: "Magnetic ordering in some organic molecular magnets" Synthetic Metals. (in press).
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[Publications] P.A.Pattenden: "μSR studies of nitronyl nitroxide organic magnets" Synthetic Metals. (in press).
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[Publications] T.Sugano: "Ferromagnetic inermolecular interactions and magnetically orderd states in some organic radical crystals" Molecular Crystal and Liquid Crystals. (in press).