1994 Fiscal Year Annual Research Report
急冷凝固過程における熱応力生成とその制御に関する研究
Project/Area Number |
06230208
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
岩城 敏博 富山大学, 工学部, 教授 (90019191)
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Keywords | 凝固 / 熱応力 / 分子動力学 / 格子欠陥 / 境界層 |
Research Abstract |
単結晶育成中に発生・増殖する格子欠陥の主因は凝固過程における熱応力であり、この熱応力の原子・分子レベルにおける生成機構と格子欠陥の関連に関する知識は皆無に等しい.本研究ではレナード・ジョーンズポテンシャルの2次元分子モデルを用いて、以下の目的で分子動力学シミュレーションを行う. 1.熱膨張率、引張、圧縮における応力・ひずみ線図の温度依存性、転位の応力場の温度依存性を明らかにする. 2.急冷凝固過程における固相、液相、それらの中間相の原子・分子の挙動より、原子・分子レベルにおける伝熱、温度、相、圧力、応力、構造を解析する。 3.温度などの物理量の境界条件について離散系と連続系の比較をする. その結果、次のことが明らかになった. 1.2次元分子モデルにもかかわらず、熱膨張率は近い値が得られる. 2.温度が高くなると、応力・ひずみ線図の勾配は緩やかになり、実際の応力・ひずみ線図の温度依存性と定性的に一致する. 3.転位近傍の応力は応力の定義によって異なり、またこの応力は温度が高くなると減少する. 4.固液境界には、数〜数十ナノメーターの固相と液相をつなぐ固液境界層がある. 5.十分な数の粒子集団の運動から得られる熱応力は、連続体力学における熱応力の概念と一致する. 6.熱応力は固液境界では液相の圧力と等しく、固相内では大きくなる.この大きさは冷却速度、境界条件に支配される.また液相の圧力は一様である. 7.格子欠陥が発生すると、熱応力は小さくなる. 8.計算機シミュレーションで可能な急冷速度では、フーリエの法則が成立しない.
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