1994 Fiscal Year Annual Research Report
放射光を利用した時間分割ラウエ法による酵素反応過程追跡実験法とトリガーの開発
Project/Area Number |
06235207
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
原田 繁春 東京大学, 薬学部, 助教授 (80156504)
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Keywords | 金属プロテアーゼ / X線結晶構造解析 / 放射光 / ラウエ法 |
Research Abstract |
Strepto myces caespitosusが体対外に分泌する蛋白質分解酵素SCNPは、中性pH付近で活性が最大になるので中性プロテアーゼとも呼ばれている。132個のアミノ酸残基(分子量14,400)から成り、活性に必須の亜鉛原子を1個持つ、いわゆる金属プロテアーゼである。ラウエ法による動的構造解析法の開発を行なうため以下の研究を行なった。[1]ラウエ法で測定した回折強度データの精度の検討:inhibitorとSCNPの複合体結晶を使い、PFでラウエ法によるデータ測定とワイセンベルグカメラによる通常のデータ測定を行なった。叉、自動4軸回折計で測定したデータとの差フーリエを活性部位周辺で計算した。この実験からラウエ法では10msec以下でデータ測定ができ、単色X線の場合よりも精度はわるいがinhibitorの電子密度は十分に見れること、従って動的構造解析に使えることが確認出来た。[2]フローセルを使った実験:SCNPにEDTAを作用させると活性部位に存在する亜鉛が除かれ、分子構造が変化し、最終的には結晶が壊れてしまう。この分子構造の変化を見るためにフローセルを試作し、これにSCNPの結晶を詰め、EDTAを含む母液を流しながらラウエ法でデータ測定を行なった。結晶が30分から1時間で壊れるようにEDTAの濃度を設定した。データは100msecごとに10msecのX線照射を5回行なったものを1枚のIPに記録した。合計10枚のIPを使って50回の照射を行なった。最初の予測通り、測定開始から約30分後結晶は完全に壊れ、回折を示さなくなった。しかし、IPに写った回折点が少し尾を引いており、5回のshotに対応する5個の回折点の間隔が短かった為、うまくデータ処理が出来なかった。[3]SCNPの反応速度のコントロール:ラウエ法ではミリ秒オーダーでデータ測定が出来るが、それでもSCNPの酵素反応速度を遅くすることが出来たら時分割構造解析は容易になる。そこで、SCNPの活性に関与している亜鉛原子を他の金属イオンに置き換え活性を比較した。その結果、コバルトに置き換えるとnativeのものより活性が少し減少することがわかった。叉、これら金属置換体SCNPの結晶化に成功した。
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[Publications] Shigeharu Harada: "Crystallization and Preliminary X-ray Studies of a Protease from Pseudomonas aeruginosa" J.Mol.Biol.230. 1315-1316 (1993)
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[Publications] G.Kurisu: "Crystal Structure of Neutral Protease from Streptomyces caespitosus" Acta Cryst.A. A49. 74 (1993)
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[Publications] 原田繁春: "Streptomyces caespitosusが産出する蛋白質分解酵素の構造" 生産と技術. Vol.46. 55-57 (1994)