1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06237204
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
金嶋 聡 東京大学, 大学院理学系研究科, 助手 (80202018)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大湊 隆雄 通産省工業技術院地質調査所, 通商産業技官
川勝 均 東京大学, 地震研究所, 助教授 (60242153)
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Keywords | 阿蘇中岳 / 爆発的土砂噴出現象 / 広帯域地震計ネット / 長周期微動 / 火口直下の水蒸気圧 / 力学的モデル |
Research Abstract |
本研究の目的は、阿蘇中岳の爆発的土砂噴出現象の物理モデルを構築することである。研究の特色となる点は、この現象に伴い放出される広い周波数帯の弾性波を解析することによって、噴出直前の準備段階から噴出に至る期間における火口直下の水蒸気圧の時間的・空間的推移を明らかにすることにある。 地下の圧力の変化(例えば水蒸気圧の増減)は弾性波を励起するから、火山の爆発的諸現象の物理を理解するには、それに伴い励起される弾性波を広い周波数帯域にわたって解析することが最も有効な手段である。我々がこれまでいくつかの活動的火山で行った広帯域地震観測から、火山爆発現象の力学的モデルとしてのモーメント・テンソル解が得られている。しかし今までの観測では観測点の方位と火口からの距離が限られており、力学的モデルの唯一性や信頼性には疑問が残る場合が多く、さらに震源の広がりや深さを精度良く推定する事も困難だった。 我々は、今年4月以来阿蘇中岳火口及び外輪山周辺で従来に無い高密度の広帯域地震計ネットワーク観測を行なって来た。そして、中岳第1火口直下の深さ1kmの狭い領域に震源を持つ周期15秒に及ぶ長周期微動の存在を確認した。その後9月半ばに至って、阿蘇中岳は爆発的に土砂を噴出し噴煙をあげる比較的活発な活動を繰り返し、我々のネットワークは、土砂噴出に2分近く先行する非常に長周期の振動を記録した。これらの変位記録は、この先行振動の振動源が上記の長周期微動源と同様に浅く、火口直下が膨脹して爆発的土砂噴出に至りその後収縮に転じたことを明白に示唆している。今回の観測結果の解析から、爆発的土砂噴出に伴う振動の震源位置や時刻、モーメント・テンソル解を飛躍的に高い精度と信頼度で推定できることが示された。さらに火口のビデオ映像や空振記録なども加えた総合的解析を行なうことにより爆発的土砂噴出現象の準備段階から終息までの全貌を明らかにできる。 我々は、上記の現象には、火口直下の火道周辺における水蒸気圧の突発的な増大が深く関わっていると推察し、阿蘇中岳におこるこのような爆発的土砂噴出現象の、準備段階から最終的噴出に至るまでの一連の過程を、水蒸気のおかれた環境および水蒸気が爆発過程の中で果たす役割を解明する物理的モデルを構築した。 火山における爆発的現象とその直前の準備期間に放出される数Hz〜100秒という広帯域の振動を至近距離かつ多点でとらえた観測は、世界にその例を見ず画期的である。さらに火口の映像や空振など振動以外の諸データも利用できることからも、これまでにない高解像度の解析が可能であり、爆発現象の理解に新しい貢献をすることが期待される。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] H.Kawakatsu,et al.: "10s-Period volcanic tremors observed over a wide areu in south westen Japan" Geophysical Researh Letters. 21. 1963-1966 (1994)
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[Publications] S.Kaneshima & P.G.Silver: "Anisotropic Loci in the mantle benerth central Peru" Physics of the Earth and Planetary Interiors. (印刷中). (1995)