1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06239229
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
並木 章 豊橋技術科学大学, 工学部, 助教授 (40126941)
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Keywords | 電子励起脱離 / 塩素アルカリ共吸着 / 2次電子エネルギースペクトル / 仕事函数 |
Research Abstract |
シリコン上の塩素とアルカリの共吸着構造は、お互いの被覆率に依存する可能性があり、反応の基本的理解は生成物の電子論的理解が不可欠である。アルカリ共吸着塩素は電子励起によりたやすくC1脱離を行う。電子励起脱離(ESD)により構造論を進めることにした。又、オージェ電子分光法(AES)により、表面仕事函数を求めることが出来る。仕事函数は、表面生成物の電気双極子モーメントを表しているので、塩素、アルカリの共吸着構造に大きな情報を与えてくれる。 塩素-アルカリ共吸着系でいかに電子励起脱離が起こり易いかを観るために、アルカリのない場合と比較してみた。表面温度は200Kである。電子励起脱離により、表面塩素は概ね指数函数的に減少する。1MLのCsの存在により、脱離の寿命はない場合と比較して10分の1になっている。又、同じ測定を300Kで行うと、脱離寿命は更に短くなり200Kの時の4分の1になった。これは、電子励起脱離過程が活性化プロセスであることを示している。活性化エネルギーは約70meVと求められる。この活性化エネルギーはCsの被覆率にはそう大きな影響は受けない。この事は、活性化エネルギーの起源がCs^+Cl^-の局所構造を反映せず、もっとマクロな配位子場のフォノン構造に由来していると考えられる。 AESの2次電子エネルギースペクトルの立ち上がりからCsとClの共吸着系の仕事函数を求めた。塩素被覆が進むと、見かけ上2つの仕事函数が定義される。二つの仕事函数の意味するところは、おそらく、表面のCs原子が塩素により移動し、Cs過剰地域とCs欠乏地域が形成されていると想像する。しかし、もっと驚くべきことは、2次電子スペクトルは1次電子線のエネルギーにより大きく変化することである。1次電子線のエネルギーが1keV以上ではピークは一つになってしまう。しかし、そのピーク位置はちょうど元の二つのピークの中間に位置する。低エネルギー1次電子線では、2次電子は専ら表面近くで生成されるのに対し、高エネルギー電子線では、それは、バルクで生成される。表面構造が、場所場所で変化するとき、それを反映した二次電子発生が起こると考えられる。従って、我々の今回の発見は、表面構造を反映した局所仕事函数の決定に道を開くものと期待される。
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