1994 Fiscal Year Annual Research Report
モデル膜を使用した溶血性タンパク質の膜チャンネル(超分子)形成機構の研究
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06240212
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
冨田 敏夫 東京大学, 医科学研究所, 講師 (00126129)
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Keywords | 溶血性タンパク質 / 緑膿菌 / 担子菌 / 膜チャンネル / 超分子 / タンパク質複合体 / リポソーム / 生体膜 |
Research Abstract |
哺乳動物の赤血球に作用して溶血を起こすタンパク質が生物界には広範囲に分布する。本研究では,生体膜の表面におけるタンパク質超分子の形成反応を理解し,それを制御することをめざして,細菌,及び担子菌(キノコ)の溶血性タンパク質が膜チャンネル超分子を形成する機構を解析する。本年度は,緑膿菌Cytotoxin,及びエノキタケのFlammutoxinのチャンネル超分子の形成について報告する。 緑膿菌Cytotoxinは,日和見感染菌である緑膿菌が産生する29kDaのタンパク質であり,ヒト白血球など種々の細胞に膜チャンネル(Pore)を形成して細胞崩壊を起こすが示唆された。本研究では,Cytotoxinが形成する膜チャンネルの分子構築を解明するために,膜に結合した毒素をドデシル硫酸ナトリウムで可溶化したのち,ウエスタンブロット法で分析した。その結果,Cytotoxinは,赤血球,及び膜タンパク質を含まないリポソーム(:赤血球膜の総脂質,あるいはリン脂質とコレステロールから調製したリポソーム)の表面で145kDaの複合体形成を形成し,膜の透過性を高進した。このオリゴマーが膜チャンネルとして作動すると結論した。 Flammutoxinは,エノキタケの子実体に存在する31kDaのタンパク質であり,種々の哺乳動物の赤血球を溶血し,Ehrlich腹水癌細胞などに対して細胞障害作用を示す。本研究では,(1)Flammutoxinが赤血球膜に直径約4nmのチャンネル(Pore)を形成する結果,細胞内外の浸透圧平衡が崩れて溶血が起こること,(2)Flammutoxinが細胞膜の表面で集合して約200kDaのオリゴマーを形成すること,及び(3)このオリゴマーが外径約10nm,内径約5nmのリング状の形態を有するチャンネルの本体であることを明らかにした。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Tomita,T.,Ishikawa,D.,Noguchi,T.,et.al.: "Pore-forming properties and oligomerization of flammutoxin,a cytolytic protein from the edible mushroom Flammulina velutipes" Eur.J.Biochem.(in press). (1995)
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[Publications] Ohnishi,M.,Hayashi,T.,Tomita,T.,Terawaki,Y.: "Mechanism of the cytotoxic action of Pseudomonas aeruginosa cytotoxin:oligomerization of the cytotoxin on target membranes" FEBS Lett.356. 357-360 (1994)
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[Publications] Tamura,S.,Yamanaka,A.,Tomita,T.et.al.: "Synergistic action of cholera toxin B subunit and a trace amount of cholera whoie toxin as an adjuvant for nasal influenza vaccine" Vaccine. 12. 419-426 (1994)
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[Publications] Tamura,S.,Asanuma,H.,Tomita,T.et.al.: "E.coli heat-labile enterotoxin B subunit supplemented with a trace amount of the holotoxin as an adjuvant for nasal influenza vaccine" Vaccine. 12. 1083-1089 (1994)
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[Publications] 冨田敏夫: "黄色ブドウ球菌α毒素はどの様にして細胞膜に穴を開けるか" 化学と生物. 33. 140-141 (1995)
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[Publications] 冨田敏夫: "細胞膜に穴を開けるタンパク質毒素-水溶性タンパク質の膜への結合とオリゴマー化によるMEMBRANE PORE形成" 生物物理. 34. 238-243 (1994)