1994 Fiscal Year Annual Research Report
発癌プロモーターとプロテインキナーゼCとの結合様式の有機化学的解析
Project/Area Number |
06240228
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
入江 一浩 京都大学, 農学部, 助手 (00168535)
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Keywords | 発癌プロモーター / プロテインキナーゼC / 光アフィニティーラベリング / フォルボールエステル / ジアゾアセチル基 |
Research Abstract |
プロテインキナーゼC(PKC)は、細胞内情報伝達におけるキ-エンザイムであると同時に、強力な発癌プロモーター・フォルボールエステルの主要なターゲットとしても注目されている。最近、フォルボールエステルはPKCの調節領域(C1領域)に結合することが示されてきているが、その結合に関与しているアミノ酸残基は全く不明である。光アフィニティーラベリングはこの問題を解明するための一手段であることから、本研究においては、多彩な光反応性フォルボールエステルとともに、光アフィニティーラベリングに用いるPKCモデルペプチドを合成した。 これまでの構造活性相関の知見に基づき、光反応性ジアゾアセチル基をフォルボールの3、12、あるいは13位に導入した新しいプローブ3種類を合成した。これらのプローブのメタノール中での光照射実験により、ジアゾアセチル基特有のWolff転位があまり起こらないことが判明し、光反応性プローブとして十分使用可能であることが示唆された。これらのトリチウム標識は二酸化マンガンにより20位アルデヒド体としたのち、市販のトリチウム標識水酸化ホウ素ナトリウムを用いることにより達成された。 ところで光アフィニティーラベル実験には少なくとも10mg程度の純粋な酵素標品が必要であるが、多くのアイソザイムからなるPKCではそれを天然より得ることはきわめて困難である。そこでPKCのC1領域に存在するシステインに富んだ配列を持ったペプチドを複数合成したところ、ラット脳PKCγの101番目から151番目のアミノ酸からなる僅か51残基のペプチドがフォルボールエステルに大して天然のPKCの約1/50という高い結合能を有し、かつきわめてよく似た生化学的性質を有することを初めて見いだした。今回合成したプローブはいずれもこのPKCモデルペプチドに有意に結合した。
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[Publications] Paul A.Wender: "Identification,activity,and structural studies of peptides incorporating the phorbol ester-binding domain of protein kinase C" Proc.Natl.Acad.Sci.USA. 92. 239-243 (1995)