1994 Fiscal Year Annual Research Report
分子性結晶の相転移における有機分子の動的挙動の解明
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06242203
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小川 桂一郎 東京大学, 教養学部, 助教授 (50114426)
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Keywords | 分子性結晶 / 相転移 / X線結晶解析 |
Research Abstract |
結晶中のダイナミックな現象は,多くの場合,相転移を伴うが,有機結晶の相転移に関する化学的見地からの研究はごく限られている.申請者は最近,(E)-スチルベン類が結晶中で大振幅の分子内運動を行っており,そのためにX線結晶解析で観測される分子構造が外見上著しい異常を示すことを見いだした.今回,(E)-スチルベンと等電子構造のアゾベンゼンおよびそのメチル置換体の一つ(E)-3,3,'-ジメチルアゾベンゼンについて,異なる温度でのX線結晶解析を行い,(E)-スチルベン類と同様の現象を見いだした.化合物3については,構造相転移が観測され,それが分子内運動と密接に関係していることを見いだした. (E)-3,3,'-ジメチルアゾベンゼンの構造相転移は,160から120Kの間で起こる.格子定数に目立った違いはないが,空間群は高温相ではPbca,低温相ではP212121である.分子構造は,高温相では反転中心をもつが,低温相では非対称である.観測されたN=N結合長は,室温では異常に短く,温度の低下とともに著しく増大した(296Kで1.219(5),240Kで1.237(4),200Kで1.255(3),160Kで1.265(5),120Kで1.274(5).これは長軸方向に180°回転した関係にある分子が重なりあうようなdisorderのためであり,温度の低下とともに分子の配向比が変化していることを示している.固体NMR研究から,この化合物においてもクランクシャフト型運動が起こっており,120K付近で相転移のあることが示唆されているが,これは今回のX線解析の結果と一致する.したがって,N-Ph結合の大振幅ねじれ振動が相転移と密接な関係のあることが明らかになった.
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Research Products
(6 results)
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[Publications] K.OGAWA: "Unusually Short Ethylene Bond and Large Amplitude Torsional Motion of (E)-Stilbenes in Crystals" Acta Crystallogr.B. 50(印刷中). (1995)
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[Publications] J.Harada: "The Central Bond Length in 1,2-Diphenylethanes" J.Am.Chem.Soc.117(印刷中). (1995)
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[Publications] A.P.Marchand: "(Z)-and (E)-Di(1-adamantyl)ethene" Tetrahecron Lett.35. 8935-8938 (1994)
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[Publications] K.OGAWA: "Structure of 8-(4-Acetylphenyl)-1,4-dioxa-8-azaspiro[4、5]decane:a New Potential Nonlinear Optical Material" Acta Crystallogr.C. 50. 95-97 (1994)
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[Publications] K.OGAWA: "Spiro[3-germabicyclo[3、1、0]hexane-3,9'-[9]germotluoreme]" Acta Crystallogr.C. 50. 1337-1339 (1994)
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[Publications] Y.Takeuchi: "Atereochemistry of 3-Germabicylo[3、1、0]hexanes and Related compounds" Main Group Metal Chemistry. 17. 121-131 (1994)