1994 Fiscal Year Annual Research Report
ショウジョウバエを用いたミトコンドリア伝達の制御機構の研究
Project/Area Number |
06256207
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
松浦 悦子 お茶の水女子大学, 理学部, 講師 (00111691)
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Keywords | ショウジョウバエ / ミトコンドリア伝達 / ミトコンドリアDNA / A+T-rich領域 / ヘテロプラズミ- |
Research Abstract |
ショウジョウバエにおいて人工的に作成したmtDNAヘテロプラズミ-では、mtDNAの伝達が温度に依存して選択的に起こる。この選択には、mtDNAの複製が関与していることが示唆されてきた。mtDNAの複製開始点を含むA+T-rich領域が選択的伝達に及ぼす効果と、それに関与する塩基配列を明らかにすることを目的として、昨年度に引き続き、以下の2つの実験を行った。 (1)D.simulansとD.mauritianaは、コード領域はほとんど同一であるがA+T-rich領域には差異があると考えられるmtDNAタイプをもつ。それぞれの種について、A+T-rich領域に約0.6kbの差のある2種類のmtDNAを用い、各々をD.melanogasterに導入したヘテロプラズミ-を作成した。導入したmtDNAの割合の変化を19℃と25℃で15世代以上調べたところ、選択の強さはA+T-rich領域の分子量が同じであっても、種によって異なっていた。このことは、複製開始点付近には種特異的な塩基配列があり、D.melanogasterの核ゲノムがコードする複製に必要なタンパク分子とそれぞれ異なる相互作用を示すため、と考えられる。また、分子量の小さい方が必ずしも選択に有利ではなかったことから、0.6kbの分子量の差異が複製の速度に及ぼす効果は小さいと考えられる。 (2)D.melanogasterではA+T-rich領域に2種類のリピート配列があり、それぞれがタンデムに繰り返されていることが最近報告された。D.simulansとD.mauritianaについて、A+T-rich領域の一部の塩基配列を決定したところ、D.melanogasterに見られるリピート配列の一つと高い相同性をもつ配列が得られた。この配列を近縁4種間で比較したところ、mtDNAのコード領域や核ゲノムの遺伝子に基づいて得られる系統関係とは異なる系統樹が得られたことから、この領域には何らかの機能があり、その機能と関連して独自の機構で進化してきたことが示唆される。今後もさらに塩基配列の解読を進め、mtDNAの選択的伝達に関与する種特異的な配列の同定を行いたい。
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