1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06260203
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
川島 降太 東北大学, 加齢医学研究所, 助手 (90250828)
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Keywords | 短期記憶 / 局所脳血流量 / ポジトロンCT / 前頭前野 |
Research Abstract |
短期記憶の情報処理に関する、ヒト脳における巨視的な神経回路の解明を行うことが本研究の目的である。2組各10名の右利き男性被験者を対象とした。10名の被験者は"短期記憶関連なし課題"施行中に、他の10名の被験者は"短期記憶関連あり課題"施行中に局所脳血流量を測定した。被験者は、両眼で単色光を凝視し、両耳より単音を聴取し、左手の人差し指の指先で振動を同時に触知することが求められた。記憶関連なし課題では、3種類の感覚刺激の中で1種類の刺激の強度(視覚:明るさ、聴覚:周波数、触覚:振動数)を連続的に変化させた。被験者には、感覚刺激の強さが強く変化したときは何もせず、弱く変化したときは右手のボタンを押すよう指示した。記憶関連あり課題では、感覚刺激を連続的に変化させるのではなく、あいだに一定の低いレベルの刺激を与えた。被験者は感覚刺激の強さの弁別を行うために、この低いレベルの刺激が与えられている間に、前回の感覚刺激の強さを記憶していなくてはならない。 局所脳血流量はポジトロンCT装置を用いて測定した。脳血流画像はコンピュータ化脳図譜システムにて、3次元的に標準脳の形に変換後、各課題引くコントロールの差分画像を作成した。各組の各感覚刺激課題ごとに統計学的に有意に活動を示した領野を特定した。短期記憶関連あり課題施行中に共通して活動を示した領野の中で、右半球の中前頭回の2つの領野は、短期記憶なし課題施行中には活動を示さなかった。2つの課題はそれぞれ、感覚入力、知覚、感覚情報の弁別運動出力に関しては、同一であり、唯一の違いは短期記憶の保持が課題遂行に必要か否かである。したがってこの2つの右半球の領野の活動は、感覚モダリティーによらない、短期記憶の保持に重要な関連があることが世界で始めて示唆された。
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