1994 Fiscal Year Annual Research Report
θ波に依存した嗅内皮質・海馬神経回路のダイナミックスに関する研究-発ガン遺伝子c-fosの発現を利用した研究-
Project/Area Number |
06260218
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Research Institution | 福井医科大学 |
Principal Investigator |
玉巻 伸章 福井医科大学, 医学部, 助手 (20155253)
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Keywords | c-fos / 歯状回 / 海馬 / シーター波 |
Research Abstract |
本研究の目的は、c-fos発現分布の違いから、海馬神経回路のダイナミックスを探り、海馬の短期記憶形成と長期記憶への変換のメカニズムに迫ることにある。これまでに、嗅内皮質と海馬の結合関係を調べてきた結果、嗅内皮質と海馬台、CA1領域はともにトポグラフィを保つように結合がされていることが分かった。それに対し、嗅内皮質と歯状回、CA3領域の結合は好対照をなし、トボグラフィは無いと考えた。その根拠は、c-fosの発現実験から得られた。ラット覚睡時に嗅内皮質表面に植え込んだ慢性電極で高周波刺激を与え、海馬でのc-Fos蛋白の発現をc-Fos蛋白に対する抗体を用いて免疫組織化学により、発現領域を3次元的に調べた。嗅内皮質表面のポイント刺激によるc-Fos蛋白の発現は、海馬長軸方向に約1mmにおよび、長軸直行断面では総ての範囲に広がっており、嗅内皮質第2層星状細胞の軸索展開から考えられる情報の広がりと非常によく一致する。つまり嗅内皮質の一点からの情報は、歯状回、CA3領域全体の1/3に伝えられていると考えられる。 ではCA1、海馬台領域ではどうかというと、これまでの処トポグラフィックに対応した位置にc-Fos蛋白の発現は、見られていない。θ波ONの状態では、c-fosの発現は無いとも考えられるが、θ波OFFの状態での実験が行えていない。嗅内皮質表面の刺激が、θ波OFFの状態を破壊してしまうという矛盾が明らかとなったからである。この問題を解決する目的で、θ波OFF SWB onの疑似環境を作るために、中隔部の刺激を嗅内皮質刺激に重ねることを行っている。これまでに中隔部刺激のみの、対照実験を行ってきたが、この際、抑制性と考えられる神経細胞に特異的にc-Fos蛋白の発現が観察されている。
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